プロローグ ー人助けー (表紙あり)
人類が衰退し始めてから数年、私達人類はもう元の美しい世界に戻ることはないのだろうか。
私達は願う。誰かがこの世界に・・・・・
「栄光の光が降り注ぐときを~。——————だってよ翡翠どう思うよ??」
「知らない。いいから紅蓮も早く探して。日が暮れてしまうから。」
紅蓮と呼ばれた青年が本の山の頂上で寝ころびながら本を
もとい、『誰かの日記』を読みながら、すぐ傍で本をかき分けて何かを探す少女、翡翠に語りかける。
が、単調な言葉づかいで顔をしかめ、冷たい目を紅蓮に向ける翡翠。
「あーはいはいっと。でもよ、どうせもうここに目的の”モノ„はいないって!あの爺さんの話は確かなのか?」
読んでいた誰かの日記をその辺りに適当に投げる。それは他の本を巻き込みながら落ちていき、途中で分厚い辞書のような書物に当たって止まる。
それをじっと見ていた紅蓮が大きな欠伸をした後、視線をゆっくりと翡翠に向けて一言。
「今日は帰ろうぜ!!」
「だめ。あの人達を助け出すには必要でしょ。」
紅蓮の要求はこれから達成する目的と共に即刻却下。
「それに。言い出したのは紅蓮のほう。」
「あぁ、わかったわかったよっと」
紅蓮は気だるそうにしながらもまた大きく欠伸をすると、本の頂上から華麗に飛び降り
――――――――落ちた。
本の山を盛大に崩し、崩れる音は室内に響くほど落ちた。まるで雪崩だ。
「ミスった」
「アハハ」と笑う紅蓮はゆっくり起き上がった後、ちらりと翡翠のほうを見る。
そんな紅蓮を見て翡翠は嘲笑すると共にこう述べる。
「本の上で急に起き上がったら倒れる。当たり前のこと。ましてや山のように積み上げられた本の上。落ちるのが当たり前のこと。ましてや格好つけようとして滑った。落ちることは当たり前のこと。ましてや」
「わかった!!もうわかった!これ以上俺のガラスのハートをバラバラに砕くのはやめてくれ」
「え?紅蓮にガラスのハートなんてあったの?」
「あるよ!今にも割れそうなハートだよ!」
「そもそも割れるハートがまだあったんだね」
「はい。とどめ刺された・・・。」
壮絶な口論の末、ボロボロにされる紅蓮。
そんな紅蓮をよそに、せっせと探し物を探し続ける翡翠。
二人は夕暮れまで何かを探す。
その何かが世界に数えられるほどしか存在しなくなった旧人類を滅ぼす”モノ„に成りえるからだ―――――。
「ホント旧人類を救うのは骨が折れるよな」
そう呟く紅蓮の目の前にはその小さな”モノ„が現れる―――――――