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<幕間2> 新しい夜明け?

*もともと2016年11月9日に投稿した話です。ファンタジーです。お子たちがなんかメタ発言とかしてますけどファンタジーです。

「やあ!」


 緑藻の巨大群体でおなじみの彼らが、にこやかに挨拶をする。

 雲越しの朝日を浴びながらお喋りに花を咲かせていた(?)ステファンとユドくんたちは、それぞれ適当に挨拶を返した。


「おはよう、ヴォルたち」

「今度は何の用かね。見ての通り、光合成で忙しいのだが」


 対するVolvox属の彼らは――


「うん! 選挙の戦況はどうかなーって」


 ――駄洒落を吐きながら本日の地雷を踏んだ。


 が、別段そこに感情移入していなかったステファンたちは、しれっと答える。


「もう結果は出てるよ。赤いヒトたちが勝利したみたいね」

「うむ。思えば、妙な話だな。全体の投票数は青いヒトたちの勢力が勝ったというのに、選挙人制度であるばかりに……」

「のん気だねー、君たち!」


 巨大群体の細胞が一斉にキャッキャ笑い出す。


「そりゃあ人間の政治なんてぼくらに影響ないんだから、興味ないでしょ」

「ところがそうでもないんだよねー♪ 政府の体制が変われば、研究機関の資金分配が変動するからねー」

「どういうことだ? この水たまりがあるのは確かに生物学研究所だが、大学付属のものだぞ。政府の影響など受けないのではないか」


 ステファンとユドくんたちはそれぞれ疑問符を飛ばす。

 間をたっぷりと溜めてから、得意げにヴォルたちが答えを提示した。


「政府の上層部が入れ替わると、科学機関への資金に変動があるのはそのとーり。NSFとかEPAにも影響が出るはずだよね」

「それがぼくらに何の関係があると――」

「この【ものがたり】に登場する画像アイコンの一部ってさ、パブリックドメインからいただいたものなんだよねー!」


 ひッ、と水中に鋭い振動が伝わった。ステファンとユドくんたちのショックから派生した余波のようなものだ。彼らは理解してしまった。ヴォルたちの話の行き着く先が見えてしまったのである。

 全員がしばしの間、黙り込んだ。

 パブリックドメイン――即ち公有財産。


「……知的財産権の発生しない画像……何故なら公共機関がそれを無償で提供したから……!」


 ステファンが恐れおののく。ユドくんたちもそれに続いた。


「もしも赤いヒトたちが科学研究に割り当てる資金を減らしたら、藻の研究なんて『実用性が低い!』と、切り捨てられる可能性も……!? それじゃあこの【ものがたり】に新キャラを出すのが困難になるってことに――」

「よし。やめよう。この話は色々つらいからやめよう。光合成だよ、ぼくらの使命は光を少しでも多くエネルギーに変えて、繁殖することだ。うん。【さくしゃ】の苦悩にまで気を回していたら仕方がないよ」


 強引にステファンが話を畳む。


 ――なんだかんだ言って、人間にとっては、藻の研究は実用性が高いものだ。


 その一点を信じるしかない。


 秋の寒空は、明るいのか暗いのか、いつになく白い――。

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