8皿目【自分の子供にチンピラみたいな叱り方する父親ってたまにいるけどあれ実際効果薄いよなぁと感じているドラゴン】
……我は【自分の子供にチンピラみたいな叱り方する父親ってたまにいるけどあれ実際効果薄いよなぁと感じているドラゴン】。先日センリの万博記念公園に行った龍なり。
足漕ぎボートの行列が最後尾一時間半とのことで、まあ当然、列内の子供という子供は大いに騒ぎにけり。我も甥姪を連れていた故、無意味に動き回って前に並ぶ知らないおばちゃんの足を踏む甥に説教をしたり、立ち疲れてぐずる彼らを交互に抱き上げたりとしていた龍なるが、彼らは言えば聞く分、随分マシな方だと思った龍なり。
我の少し前に並んでいた子供ら二名が、退屈に狂ってか、ボート屋の看板をガンガン殴ったり蹴ったりしていたものなり。それを見た、彼らの父親とおぼつかしきチンピラ風の男性が、巻き舌と唸り声を交えて「オルァ、ワレコラ何ふざけた真似し腐っとんのじゃァ!! 大人しゅうせんかいボケェゴラァ!!」という旨のことを猫背でガンくれながら子供らに諭した所、子供らはガン無視したまま看板をガンガン蹴り続けたなり。
自分の子供にチンピラみたいな叱り方する父親ってたまにいるけど、あれで子供らが素直に言うことを聞いているシーンを、千四百四十年に渡る半生の中で我は一度たりとも見たことがない龍なるが、実際あれって効果あるのか疑問に思う龍なり。
そりゃまぁ一般人が怖がるようなチンピラ風の男も、子供らにとってはただの父親なわけで、チンピラ風の叱り方も聞き慣れればなんということもない、とはわかるものなり。むしろ、父親がチンピラ風だと周囲の他人は関わり合いになりたくないと思い、看板をガンガンする子供らに注意をするような真似も控えるものと推測される、というか我は実際関わり合いになりたくなくてガン無視していた龍なるし、他人事ながらあの子供らの将来が心配だなぁなどとぼんやり考えていた龍なり。
なお、看板をガンガン蹴っていた子供らは、母親らしき女性に引っ張られて列から消えたなり。
「あ、あれじゃないですか? 奥の方」
「おー。やっぱすげえな、その感知力。【自分の子供にチンピラみたいな叱り方する父親ってたまにいるけどあれ実際効果薄いよなぁと感じているドラゴン】なんて普通に探してたら、一週間は出会わないのもザラなんだぞ」
「……雑作もない。あらゆる闇は我が下僕よ」
……ん、何か我が窟の入口の方から、矮小なる人の子と森の子と……あれ、あと暗黒龍の末裔が来たみたいなり。わざわざ何しに来たなるかな。会話内容から察するに、我を探しに来たようなるが。
「見つけるのは面倒なんだが、見つけた後は割とサクサクなんだよな」
そう言いながら一瞬で距離を詰めた矮小なる人の子の振るう彼の者の身の丈ほどの大鉈が視界に入ったと思った時には、我は地べたの高さから首のない龍の胴体を見つめており、急速に熱を失ってゆく意識の中、何やら歓声を上げる森の子の声だけを、最期に聞いていた龍なり。