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あんさんぶるっ  作者: 風谷かほる
第一楽章
5/5

パート練習

 基礎練習が終わり、ふうっ、と息を吐いた。

早弾きで親指が痛い。

右の親指を見つめたら、今度は腕を下ろし手を降って手首と指のコリをほぐす。

基礎練習は準備体操。まだまだ序の口。


 「パート練習いきまーす。課題曲のほうからー。」

柚希先輩の掛け声で皆が楽譜を取り出す。

コンクールでは課題曲と自由曲の2曲を弾く。

課題曲のほうが自由曲より易しい。しかし一年生に易しいなんて言っている余裕はない。

しかも全ての出場団体に課せられた曲だ。

他団体と直接比較されるし、どの団体だってそのつもりで仕上げてくる。


 そんなことを考えていたら私だけ楽譜を探し終えずに先にパート練習が始まった。

軽快に課題曲の冒頭部分が始まる。

完全に乗り遅れた。急いで入らなければ。

やっとのことで楽譜を出した私は、次からは基礎練習の前から譜面台に楽譜を置いておこう、と決心しながら音の波に必死に入っていった。


 「もう一年生も楽譜を暗譜してね。コンクール本番は譜面台無いから。」

細かい箇所の確認を終えてから柚希先輩がそう言い放った。

暗譜だと。私の一番苦手とするものではないか。

以前から知っていたので覚悟はしていたがまだもう少し待ってくれ。

そういえば今時点でどれくらいの人が暗譜で弾いているのだろう。

そう思って見回したら、見える範囲では先輩二人のうち1人と一年生2人は2人とも楽譜を出していなかった。

私の正面で堂々とこのパートの輪に君臨する柚木先輩は確実に暗譜だ。

つまりバスパートの過半数は暗譜済み、一年生のみで見たってそれは変わらないと思われる。

みんなが楽譜を出すのが早かったのではなく、多くの人が暗譜をしていたのでそもそも楽譜を出す必要が無かったのか。

これは大変だ。私は大いに焦るべき状況にあるのではなかろうか。


 「はい、じゃあ入り合わせてBから入って。」

柚木先輩の指示が飛び皆がギターをさっと構える。

私が最終ページを開いていた楽譜を始めに戻してから構えたその時、先輩の短いカウントでパート全員が合わせて弾き始めた。


 またもや少々入りそびれてしまったのろまな私は、それでも必死に食い下がり音の波に乗ろうと七転八倒するのである。

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