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第四話ー戻らない過去、続く日常ー

(あーあ、またやっちまった……。あんなもん、忘れるって決めた事だろうに)

 天音はきっと、いや間違いなく忘れている。中学の頃、俺は本気で彼女の事が好きだった。毎年文化祭の時に行われた、半分遊びで、半分本気の告白イベント。三年の時、それの主催者に頼み込んで、天音に対してだけは、完全に本気の告白をさせてもらった事を。

「いつまでも引きずってられないから、一番近いここを選んだんだけどな。まさか、こっちでも同じクラスだなんて。殆ど、コメディの世界じゃねえか」

 誰に言うまでもなく、一人ごちる。元々誰もいない場所だし、誰かが聞いてる事なんて有り得ないけど。さっきのセリフで胸が痛んだって事は、まだ好きだって事なんだと思う。っていうか、あの笑顔をまともに見られないって時点で、完全に致命的だ。家はすぐ近くだし、嫌でもほぼ毎朝、確実に顔を合わせる。だからわざと登校時間を早めたり遅らせたりと、話す機会を自分から遠ざけていた。なのに今回の、文化祭実行委員入り。出来る事なら、全部放り出して逃げたい。

「もうすぐ一限始まるな……。顔合わせるのも微妙だし、今日はいっそサボるか」

 成績面に関しては、殆ど心配要らない程度には、稼いである。サボりがバレたら親に多少怒られるが、まだ二人共出張先だ。下手すると年越しはこっちでするかも、と昨日電話があった。学校はその事は知らないし、余程の事が無ければ安心出来るはずだ。

「お、やっぱここか。まあ、一人になれる場所なんて、屋上しか無いもんな」

 入口からは死角になる、給水塔の下。そこへ続く階段から、純也が顔を出していた。って、うたた寝してたらもう一限終わりかよ……。

「一限、現国に変更って忘れてただろ?先生、怒ってたぜー。もし見つけたら即刻引っ立てろ、ってな」

「早退するにしても、放課後の委員会だけは出させる」と、呟いていたとか。あの先生ならやりかねない……。

「いきなりいなくなったからって、皆心配してるぜ?特に、天音と向後さんが。先生は適当に誤魔化してやるから、戻るぞー」

 首の後ろを掴まれ、下手人か動物のように捕らえられる俺。市場に売られる子牛ってのは、こんな気分なんだろうか?

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