第三話 幕間ー少女の場合ー
(何か引っかかるなー、さっきの顔。小さい頃の思い出しか無いけど、あんなに思いつめた顔する奴だったっけ?)
ふと見せた、険しい表情。仕事場でもスタッフの中に、似たような顔をする人はいた。大抵は過密スケジュールに疲れ果てた、新人さんが多かったけど。でもあれは、何かに悩んでいるのに、誰にも頼れない、頼ろうとしない種類の人がする顔だ。まだ十五年しか生きていない私だけど、誰よりも多くの人と接してきたから、そういう勘だけは働く。嫌な性分だなー、と自分でも思うけど。
「何で二人とも、余所余所しく話してるの?昔の話ばっかりになるけどさ、あんなに仲良しだったのに。って、あーちゃん?」
おーい、と声をかけても、彼女は全くの無反応。ユーゴが出て行った扉を見つめて、全く動かない。贔屓目に見ても可愛い分類に入る子だし、まるで人形のよう。でも無視されるのもちょっと癪に障るので、頬をつねってみた。
「いひゃ―――?!あ、ごめん。ちょっと考え事してたみたい。で、何の話だっけ?」
「だからさ、何であーちゃんとユーゴ、こんなにぎこちなくなってるの、って。そりゃさ、もう子供じゃないっていうのは、分かるよ?それにしても、ちょっとおかしくない?」
それは、私の単なる直感。とても仲良しだったあの二人が、十年ちょっとで様変わりしているなんて、考えたくもない話だったから。
「って言われても……。日向が私と碌に話さないなんて、今に始まった事じゃないし。覚えてる限りだと、まともに話したのは中三の夏休み前かなー」