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第二話ー秋、騒がしい日常ー

 それが今から約半年前で、今は九月中旬。だというのに、天気は真夏。しかもこの後には学園祭が控えているというから、この学校はちょっとおかしい。体育祭の一か月後に文化祭って、忙しいにも限度って物が、だな……。

「えー、というわけで。来月には本番だというのに、未だにうちのクラスは発表内容が決まっていません!さっさとしろゴルァー!と実行委員長からもせっつかれてるので、出来れば今週中に決めたい所なん、です……が」

 朝のホームルーム前。前日の放課後にしようと思っていた事を、皆の前で切り出した。敢えて言おう、全員それどころじゃない。某担任が夏休みの課題を出し忘れ、今になってそれが全て、あろうことかうちのクラスだけに、盛大に圧し掛かっているのだから……!

「あはは、だねぇ~。でもさ、実際どうする?三年生の進学クラスじゃないと、出し物の免除って無かったよね?」

 進学クラス、正式名称は特別進学コース。出席の免除というお題目があり、そこの生徒は全員、何処かの進学塾へ通っている。おかげで、ほぼ全員が毎日欠席、いるのは日替わりで一桁台というから驚きだ。そこの担任も、数枚の書類を処理すれば、それで十分仕事になるという。勿論、受け持ちの教科はあるわけだけど。

「ヒナ先生は寝不足とか言って、さっさと逃げるしな~。こりゃ、最終日の罰掃除も覚悟するしか無いか?」

 今年の実行委員長は、かなりの強行路線だった。元々文化祭は学校公認の遊べる日という事で、出展放棄をするクラスは存在しない。というか、こんな楽しいイベントを寝て過ごすなんて、かなり馬鹿らしい。それでも展示内容の提出遅れは毎年目立ち、それに業を煮やした委員長が、強権を発動させていた。

『えー、今年の文化祭に関してのお知らせです。委員は必ず、忘れずに自分のクラスには伝えるように、その足りない頭に叩き込みやがってください。展示内容の提出が一番最後、且つ残り半月を切った場合、該当クラスは業者と一緒になり、最終日に撤収作業をさせます。因みに校長は、経費削減になるから、と喜んで許可をくれやがりました』との事だった。いやー、二人してすっかり忘れてた。昨日の忠告が無ければ、間違いなく。

「え、あれって都市伝説じゃないの?!いいんちょ、いいんちょ。こんなアホな課題、律儀にやってる場合じゃないってばさ!ほら皆、学祭の準備するよー!校舎内の片づけなんて、やってらんないって!」

 内緒話のような会話も、正面にだけは聞こえていたらしい。真面目に課題ノートをこなしていた目の前の女子は、顔を上げて叫んでいた。さすがクラス一の元気印、木下香奈。女子最強の煽り役は伊達じゃない!それに続いて、男子の方からも声が上がっていった。

「おおう、流石にそれは容認できんな。ふむ、我が灰色の脳細胞を駆使して、最高の催しを考えてやろうではないか?」

「黙れ、変態。あんたのは灰色じゃなくて、桃色だろうが!でもさ、実際どうする気?この短期間で準備出来る物なんて、結構絞られるわよ?それに私もだけど、中には部活とか同好会とかで、そっちの準備に追われる人も半分近いし」

 自称変態紳士、山脇君のセリフに、演劇部の渡井さんが返していた。因みにクラス委員でもある。文化部より、運動部の方が多いこのクラスは、多分学年一で部活参加者が多い。四十人中の二十六人だから、実質半分以上だ。俺と天音は部活もバイトもやっていないから、と実行委員にさせられた位だし。

「一応、枠は演劇と食べ物系が空いてるみたい。迷路とかのアトラクションは満杯で、大規模なのが多いから、どのみち参加は厳しいんだけど。演劇は渡井さんしか経験者はいないし、厳しいかな、って思うんだ」

「って、そんなのいつの間に調べたんだ?委員長、そこまで詳しくは話してなかった、よな?」

 天音が持っていたメモには、事細かに学園祭の出展内容が記入されていた。何処が何をやるか、までは流石に無かったが。それでもクレープ屋やケーキ等の洋菓子物、和菓子系が幾つ等、事前公開される範囲ギリギリまで。

「あー、やっぱり忘れてるー!酷いよ、日向。人に使いっ走りさせて、すっかり忘れるなんて。他のクラスの子に聞いたり、先生から無理やり聞きだしたりして、大変だったんだから。木谷君、この朴念仁、どうしてくれましょうか?」

「そうですねぇ、時間も無いので、判決は先延ばしにしませう。おーい、そっちで話し合うのもいいけど、そろそろヒナせんせが来るぞー!」

 ご丁寧に俺にヘッドロックをかけつつ、純也がクラス中に声をかけていた。いててて、だからしっかり決まってるって!ああ、何処かに救いの神はいないのか……。

「こらー、席つけー!木谷、処刑は公開でやるもんだって、昔から相場が決まってる。後で良い舞台を設えてやるから、日向の処刑はそれまで取っておけー」

 ……女神かと思ったら、死神でした。議論というか口げんかをしていた周りの連中も、先生の登場にすごすごと席へ座っていく。俺もやっと解放され、首を鳴らしながら席へと向かっていった。

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