第十五話ー想い、思われー
「おっ疲れー!なんだよ勇吾ー、お前らすげえじゃん。お客さん、全員総立ちだったぜ?特に最後のシーン、あれ見てるだけで胸が熱くなったしな!」
袖から通路へ出ると、クラスの全員からもみくちゃにされた。やってた時は全員汗だくだったけど、今は違う。まるで体育祭の後のように、爽やかな笑顔。こいつらも多分、あれが素の俺達だった事には気付いてないんだろうな……。
「当然、誰が出てたと思ってるの?この私とあーちゃん、それにユーゴが揃ってるんだもん。最高の舞台、作れないわけがないよ。ね、二人共?」
俺と天音は、頷いてから顔を見合わせた。多分、向後さんは気付いてる。その上で、今までと変わらないように接してくれていた。いや、そうじゃない。この仕草も演技なんだとしたら、きっと心の中で泣いてるんだ……。
『話は、次の振り替え休日に』
日向は、私にそう言ってきた。ちゃんと全部、私が忘れている事を教えてほしい、そう伝えたから。気持ちは、変わってない。しーちゃんと一緒に歩いているのを見て、隣に私がいない事が、不思議に思っている位だから。
「あーちゃん、お疲れさまー」
文化祭の最終日、片付けが終わった頃。私は一人、屋上にいた。流石に疲れちゃったから、休憩って事で。
「ユーゴがさ、こっちに向かうのを見た、って教えてくれたんだ。周りは……誰もいないよね?」
しーちゃんは今回の劇で、生徒からも見に来た観客からも、一目置かれる存在になった。それも当然、元国民的アイドルが引退して、普通の高校で劇に参加したんだから。終わった後に、色々な人が列を作っていたのは多分、それが原因だと思う。
「あーちゃんはさ、ユーゴの事どう思ってる?」
フェンスの外を眺めて、しーちゃんがそう聞いてきた。髪が少し揺れる位の、穏やかな風。逆光になる夕焼けのせいか、顔が良く見えなかった。
「好き、なんだと思う。付き合いたいとか、そういう風に思ってる訳じゃないんだけど。今はとにかく、少しでも傍にいたいって、そう考えてるんだ。しーちゃんが日向を気にしてるっていうのは、見てて分かる。でも、これだけは譲れない。ううん、譲りたくない」
「そっか……。本当はさ、知ってたんだ。あーちゃんがユーゴを気にしてる、って。私もユーゴの事は好きだよ?だから無理を言って、この学校に来た位だし。無茶したなーって、今も思ってはいるけどね」