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恋の縁術師(the Secret Affair)  作者: 枕木悠
第四章 引田旋李のスーベニア(the Chinese Cat)
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第四章⑤

 松平邸での会同終了後、フミカとチカリコはマナミにお茶に誘われた。ジンロウとシノブとユウには先に帰ってもらって、錦景公園に隣接する、九番館という喫茶店に三人は入った。外観はチョコレート色をしていて、木製の扉はどう見ても板チョコだ。この店に来るのは今回で三度目。

 店内は狭く、先にそれぞれ毛色の違った三組のグループがいたが、フミカたちが入ったことで、テーブル席は満席となった。店内の壁は白く明るい。照明も強く光っている。カウンタ席が空いていて、そこに一人座って煙草をくゆらしているのがこの喫茶店のマスタだ。彼はナンバ・ナインというメーカのシャツを着ている。鋭い顔付きだが、笑うと途端に可愛くなる男性だ。歳は四十代くらいだろうか。髪が長くって、それが似合う格好いいおじさんなんだ。声も渋い。「いらっしゃい、三人?」

 マスタはフミカたちを奥のテーブル席に案内した。そして可愛い笑顔を見せて注文を聞いた。三人はチョコレートパフェと珈琲を頼んだ。すぐにパフェと珈琲がテーブルの上に並んだ。ここのチョコレートパフェの生クリームは山盛りで不安定。だから早く食べなくっちゃいけない。女子たちは黙々と生クリームをスプーンで掬って口に運んだ。

「もぉ、フミカちゃんってば、ほっぺにクリームが付いてるぞ」

 フミカの隣に座るマナミはそう言ってほっぺを、限りなく唇に近いところをペロリと舐めた。

「ひっ、」思わず変な声が出た。急に舐められたので首筋がゾクッとなった。でもマナミは美人なので、フミカは嫌な気がしなくて笑ってマナミのことを二秒見つめてしまった。「えへへぇ、……!?」

 見つめていたらチカリコに足を蹴られた。チカリコはフミカとマナミの正面に座っている。視線をそちらに向けると、チカリコは笑顔でパフェを食べていた。チカリコの不機嫌さが、フミカには分かった。マナミにデレデレしちゃったのでお姫様はお怒りになられているんdさ。そしてマナミが気付かないテーブルの下で、チカリコのローファの爪先はフミカの足を蹴り続けている。

「い、痛いよ、」フミカはそろそろ我慢できなくって声を上げた。「ちーちゃん」

「え?」チカリコは珈琲を風雅に飲んで笑っている。「何が?」

「どうしたの、フミカちゃん?」マナミも風雅に珈琲を飲みながら聞いてくる。

「きっとなんでもないよ、まーちゃん、きっとね、」チカリコはマナミに視線を向ける。チカリコはやっと蹴るのを止めてくれた。フミカはほっと息を吐く。「それで、まーちゃん、相談事って何?」

 マナミが九番館に二人を誘った理由はチョコレートパフェだけじゃなかった。二人に相談したいことがあるんだよ、とマナミはトイレで手を洗いながら言ったのだ。

「ああ、そうだった、そうだった、私は……」マナミは今思い出した、という風に装った。「二人に相談したいことがあったんだ」

 マナミはカップを持ち上げ、珈琲で唇を湿らせた。そして微かに表情に陰を作った。しかしすぐに陰を振り払い顔を明るくして彼女は口元を動かす。「スズメちゃんのことなんだけどね」

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