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恋の縁術師(the Secret Affair)  作者: 枕木悠
第三章 センチメンタル・ピストル・ブギ(Sentimental Pistol Boogie)
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第三章⑧

 エクセル・ガールズのライブは錦景第二ビルの最上階にあるブロック・ガーデンというライブハウスで行われる。キャパシティは五百人くらいの箱。フミカとチカリコとシノブとジンロウのジャパニーズ・シークレット・アフェアもここでよくライブをしている。一週間前にも出演したばかりだった。

 本日はエクセル・ガールズのワンマンライブ。メンバ六人、それぞれのイメージカラーの法被を纏った男たちでブロック・ガーデンは熱気に包まれていた。

 フミカたち四人は、彼らの隙間を通り抜けてステージの右側前方に用意された男子禁制ゾーンに入った。エクセル・ガールズのライブには必ず男子禁制のゾーンがあって女の子が男たちにもみくちゃにされないように配慮されている。それはエクセル・ガールズのブルーの橘マナミが提案したものだった。彼女には女性ファンが多く、基本的にマナミの立ち位置は客席から見て右側なので右側前方に男子禁制ゾーンが用意されていた。そのゾーンもすでに女子で溢れていた。フミカやチカリコみたいに制服姿の子たちもいるし、着飾ったお姉さんたちもいるし、サブカル好きの女子大生風のお姉さんもいた。四人はその人たちの後ろに並んだ。

 フミカは時刻を確認する。

 錦景市は夜の七時。

 開演は近い。

「こっちからステージを見るとこんな感じなんだね、」手を目元に翳してステージを眺めながらシノブは隣に立つフミカに言った。「結構よく見えるんだ」

「そうだよ、こんな感じ、そう言えばシノブ君って、こっちからの風景を知らないんだよね、普通逆だよね」

「うん、初めて」

「ねぇ、今度のあなたたちのライブっていつ?」シノブの向こうからカナデが聞いてくる。カナデは基本的にずっとニコニコしている。人懐っこい猫みたいな可愛い人だ。フミカが仲良くなりたいタイプの女子である。「シノブ君から聞いたよ、バンドやってるんでしょ? 見たいな」

「えっと、ちーちゃん、次っていつだっけ?」

 そのタイミングでフロアの照明が落ちて一度完全に暗くなった。

 歓声が上がる。ライブが始まるんだ。オープニングSEが響き始める。今年に入ってエクセル・ガールズのオープニングSEは変わった。

 響いているのはキャロルの『グッド・オールド・ロックンロール』。

 暗闇の中、天井のミラーボールが回って光を放ち、星屑の風景を作る。

 その中、エクセル・ガールズが舞台袖から登場して所定の位置に付く。

 こちらに背中を向けて立つ。

 彼女たちは大きめのシルクハットを頭に乗せている。

 キャロルのロックンロールが唐突に鳴り止んだ。

 照明が明るく、金色に六人の背中を強く照らし出す。

 ファンタジックな静寂が二秒。

 真ん中に立つ、ピンク色のスズメが右腕をピンと伸ばした。

 親指と人差し指でピストルの形を作る。

 歓声が上がった。

 カナデの声が一番大きくってちょっと吃驚。

 スズメは片足を持ち上げてクルリとこちらに振り返り。

 裾の広いスカートを揺らして。

 片目を瞑って誰かを打ち抜く素振りを見せた。

「センチメンタル?」スズメが舐めるように客席を見回し問いかける。

 それにこちらは即座に反応。『ピストル・ブギ!』


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