第4話
「木村さんが住んでいる世界が、どんな所か何となく分かりました。」
「わかっていただけましたか」
木村は、何度も笑顔で頷いていた。
「木村さんが言う事が本当なら、私は自殺したから、木村さんの世界に行くだけなんじゃないですか?」
「はい。そうですね。宮部さんは自殺したから、私達の世界で、カリキュラムをこなしてもらって生まれ変わるんですよ。でもね、今、ちょっとした問題が出てきまして」
「問題って、何ですか?」
「はい、それはですね。年々増加する自殺者の数なんですよ。ちょっと、これ見てもらえます」
木村は腕を上げると「パチン」と指を鳴らした。
愛の横にスクリーンが現れ、グラフが映し出されていた。
愛は「またか」と思い、驚いた顔をするわけでもなく、グラフを見た。
木村は、そんな愛の顔を見ると残念そうな顔をした。
木村は、立ち上がりグラフの横に立った。
「見てください。この自殺者の数。年々右肩上がりに、増え続けています」
愛がグラフを見てみると、確かに右肩上がりになっている。
ここ数年で、住みにくい世の中になってきている。
リストラや、家庭的な問題。他人との関係。
色々な問題があって、みんな自殺するのだろう。
私も、そのうちの1人だけど。
木村が話を続けた。
「この自殺者の増加が問題なのです。カリキュラムをこなして生まれ変わるまでに、最低3年はかかります。3年ですよ!3年!!結構な期間です。おかげでカリキュラム待ちの魂で、私達の世界は溢れかえろうとしているのです!!」
木村は興奮してきたようだった。
顔を真っ赤にし、汗を拭きながら、さらに力のこもった声で、熱弁しだした。
「そこで、私達の世界で会議がおこなわれたのです!!カリキュラムを短くしようって案もでたんですけど、質を落としたら意味がない。しっかりとしたカリキュラムがあってこそ、魂は強くなるんだって、反対の声も出ましてね。ま〜、私的には短くしても、問題ないと思うんですけどね。だって…」
話が脱線しそうになっていった。
愛が冷たい視線を送った。
木村がその視線に気付き「失礼」と言った。
「失礼」が木村の口癖みたいだ。
木村が話を続けた。
「短く出来ないならどうするかって事になりましてね。そこで出た結論が、自殺者の数を減らそうって事なんです!!そのためにはどうするかって事です!!わかりますか宮部さん!!」
木村が、愛を指差しながら質問する。
愛は突然の質問に驚いて「えっと…わからないです」と答えた。
木村は、そんな私の顔を見て満足そうに話を続けた。
「自殺しようとしている人を説得して、考え直してもらおうって事なんです。そこで自殺予防センターを作りまして、説得にあたっているんです。今回自殺した宮部さんの説得役として、私が来たって訳です!!分かっていただけましたか!!」
息を切らしながら、愛の顔をみる。
木村の説明を聞いて愛は、考えていた。
ようするに、この木村って男は、
自殺しようとしている私(正確にはもう飛び降りてるんだけど)
を説得しに来たって訳なのね。
でも、私の元には愛していた彼はいない。
「遊びだよ」の一言を残して去って行った。
私は…死にたい。