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夢間の喧騒

「おい」

眠っていると枕元で声がする。肩も揺さ振られているらしく、

おぼろげながら段々と目が覚めてくる


「おい、起きろ、田辺清よ」

「……ん」


なんだか僕を呼んでる?

誰だろう?

今日は家に誰もいないはずなんだけど。


寝ぼけた目を擦りながら体を起すと、枕元にふわふわと何人もの人間が浮いていた。

「………………」


あ、夢だ。

直感的にそう思うと、気分が少し落ちついた。


「田辺清よ」

「えっと、何でしょう?」

とりあえず返事をしてみる、

よく観察するとおじいさんや太ったおじさん、

鎧甲冑を着た武者まで、色んな人がいる。

「ぬしは」

「はい」

鎧の人の一人が話しかけてくる。

「ぬしは、七福神と我ら戦国武将、どっちが日本に貢献したと思う?」

「はい?」

なかなか難しい質問だ、

七福神、は分かる、けど戦国武将って、幅広すぎくないか?


「質問を変えよう、君は七福神を知っているか?」

「ああはい、まぁ、それなりには」


腕を組んで悩んだまま黙った僕に気を使ってか、

別の鎧の男が訊いてきた。


「では、それぞれ名前とどんな神か知ってるか?」

「名前ですか、えっと、恵比寿、毘沙門天

弁財天、大黒天、布袋……それから…………」


心なしか皆の視線が期待を込めて集まってきている気がする。

…………あれ?あと誰だっけ?

数からして後2人いるはずだけど。


「えっと、その、すいません、わかりません」

正直に打ち明ける、どうせ夢だ。

分かりませんという回答がよっぽど滑稽だったのかな、

鎧を着てない人たちはかなり落ちこむし、鎧の人たちは歓声をあげて踊りだす。

非情に居心地悪い、自分の部屋なのに。


「いやいや良いのだ少年、我々の思った通り」

また別の鎧の男がそう言って肩をバンバン叩くと、

鎧を着てない数人に向き直り、

「そら見ろ、七福神、貴様らの知名度などこんな物だ」

と、言う。

 そしてその台詞を皮切りに、両陣から猛烈な言葉の応酬が始まり、

こっちはどんどんいたたまれない気持ちになってくる。


 その内、鎧を着てない人達の一人が、泣きそうな顔になって、

「じゃ、じゃぁ田辺清、ぬしは

長宗我部ちょうそかべ 信親のぶちかを知っておるのか?」

「あ、えっと」

歴史の授業で習った知識をフルに活用する、

………………ダメだ、ぜんっぜん分からない、たぶん授業にも出てきてない


「えっとその、歴史に詳しくなくて」

今度は鎧を着ていない人たちの方が歓声を上げる

「あ、で、でも長宗我部は知ってますよ」

とフォローを入れても、もう遅いみたいだ、

鎧を着てない人たちは踊り狂ってるし、

鎧の人たちは今にも抜刀して襲い掛かってきそうだ


「なぁ田辺清」

しばらくして鎧の人の一人が、額に筋を浮かばせて

顔を近づけて迫ってきた。


「薄々察しているとは思うが、

我々は戦国武将と呼ばれる者たちだ、いずれも教科書に載るような人間達だ、

そしてそっちで踊り狂っているのは、

一見ただの阿呆だが、いちよう七福神なる神の集団だ」

そうだったのか、全く察してませんでした


「我々はどちらが現世の人間に、

ひいては日本の役に立ったかを競っている、

色々議論した結果、現世の人間に直接聞いた方が速いと云う結論に達したのだ」

はぁ、そうですか

「そこでだ、田辺清、はじめの質問に戻る」

鎧を着た戦国武将はそこで一区切りつけると、今までより3段階ほど余計に凄んで、

「どっちが役に立ってきた?」

と、僕の顔に盛大に唾を飛ばして睨んだ。


「無論我ら七福神だよな!?」

「争いの世を平定した我らに決まっている」

「争いはお主等が勝手に起したのだろう」

「うるさい、お前らのような、

幾つもの国も宗教も跨った、何の神かも分からん神よりましだ」

「い、言ったなぁ~~」

こうして、また口論が始まった


しばらくして、はたと気が付く

一体どっちの味方すればいいんだ?

もし戦国大名だというとする、

すると、仮にも「福」の神に喧嘩を売った事にならないか?

でも七福神を味方したとしても、

今ここでバッサリ切り伏せられないとも限らない

・・・え、選べない、

とても選べたもんじゃない!

「どっちだ!?」

「さあどっち!?」

訊いてくる日本のお偉いさんを前に、僕は腕を組んで唸り続けるのだった。

もともと、くぃかそが三醍話として書いたものです

お題は「七福神、戦国武将、現世」


………………よく頑張った方だと思います

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