第二話 「行方」
「はぁ……」
おざなりに体を傾け、悪意をのせたため息を、知らせるが如く、強調していた。
ほかの人間も、同じような表情だ。
思うことは、こういうとき一致するもんなのか。
つくづく人間ってのは、神経質な生き物だ。
「俺が言えたことじゃないか。なぁ?」
「……?」
その子は微妙にチョコンと頷いてくれた。
その素直さが物珍しくて可愛い、思わず笑みがこぼれる。
「なんで笑えるんだよ……」
俺のその一言で体を傾けていた男が、怒りの形相で俺を睨んできた。
だが、短い言葉を吐き、まるで、要件はそれだけだというように、元通りの体勢に戻った
短い要件で俺は助かるのだが、ここにいるやつ全員そう思っているのだろうか、めんどくさい雰囲気だな……
音を出さずに小さくゆっくりため息をついた。
「すいません」
無難なことがないようにと、一応謝っておく
聞こえてたかは分からないが返事はなかった。
幾分疲れてるんだろう……
俺がおかしいんだろうな…普通の反応なのだろう
気休めにふと、空を見た、ゆらめいて光る星が夜空の装飾にしては、美しすぎる。
まだ、開きっぱなしの乗車口から、夜風の冷たい風が車内を冷んやりさせた。
「寒くなってきたな…お嬢ちゃんもうふ被っときな」
その子を見ると体が小刻みに震えていることに気づいた。
「ねむい…」
「そうか、ちゃんとかぶって寝な。」
そうだな…確かに冷えてきた、夜だから多少冷えるのであれば普通なのだが、だんだん増してきてる気がする。
寒いと眠くなるよな…特に車にいると…揺れが心地いいのか…
*
「雪か?今夏じゃなかったか?」
車内にいる誰かの声で、うとうとしかけていた、意識が戻る。
「雪?」
乗車口に広がる景色の方へ顔を向けた。
確かにところどころではあるが、道端に、少し雪が地面を白くしている箇所がある。
何処に向かっているのだろうか…
「そろそろドアを閉めます。この車両は極北に向かっています、かなり寒くなるので、ご了承下さい。」
「極北……スノーブルグ極北地帯か…」
雪国に避難か……これは先がキツそうだな…
この子を連れて、どうやっていくのか…目の前に座って眠る男は、どうするつもりなのだろう。
「まぁ、なんとかなるもんだからな。」
心配することはないだろう。雪国だろうが砂漠だろうが、一人残されて野垂れ死ぬ環境にいるわけじゃない。
死ぬことはないはずだ。
だが、心の痛みは別だ。
「……」
今眠るこの一人少女は幼くして、両親を失くして、雪国でこっそりと過ごすことになる、その未来にどれほどの痛みがあるのだろう。
今はスヤスヤと眠る可憐な姿。その身体に宿る、幼い意識はどれほどの傷をかかえて生きていくのだろうか…
「……俺には想像がつかんな……」
冷え切った車両のなか、眠気が数段強く襲ってきた、瞼を任せ。ゆっくりと目を閉じた。
目を閉じて考える。
その子と俺の人生の差を。
その子より長く生きていても、その子が抱えた痛みを越えるほど、辛かった記憶はない。
俺とはなんだろう。俺の価値とは何なのだろう
生きていて、意味があったのだろうか。




