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アンセストリー  作者:
2/3

第二話 「行方」

「はぁ……」


 おざなりに体を傾け、悪意をのせたため息を、知らせるが如く、強調していた。


 ほかの人間も、同じような表情だ。


 思うことは、こういうとき一致するもんなのか。


 つくづく人間ってのは、神経質な生き物だ。


「俺が言えたことじゃないか。なぁ?」


「……?」


 その子は微妙にチョコンと頷いてくれた。


 その素直さが物珍しくて可愛い、思わず笑みがこぼれる。


「なんで笑えるんだよ……」


 俺のその一言で体を傾けていた男が、怒りの形相で俺を睨んできた。


 だが、短い言葉を吐き、まるで、要件はそれだけだというように、元通りの体勢に戻った


 短い要件で俺は助かるのだが、ここにいるやつ全員そう思っているのだろうか、めんどくさい雰囲気だな……


 音を出さずに小さくゆっくりため息をついた。


「すいません」


 無難なことがないようにと、一応謝っておく


 聞こえてたかは分からないが返事はなかった。


 幾分疲れてるんだろう……

 俺がおかしいんだろうな…普通の反応なのだろう



 気休めにふと、空を見た、ゆらめいて光る星が夜空の装飾にしては、美しすぎる。


 まだ、開きっぱなしの乗車口から、夜風の冷たい風が車内を冷んやりさせた。



「寒くなってきたな…お嬢ちゃんもうふ被っときな」


 その子を見ると体が小刻みに震えていることに気づいた。


「ねむい…」


「そうか、ちゃんとかぶって寝な。」


 そうだな…確かに冷えてきた、夜だから多少冷えるのであれば普通なのだが、だんだん増してきてる気がする。

 

 寒いと眠くなるよな…特に車にいると…揺れが心地いいのか…



「雪か?今夏じゃなかったか?」


 車内にいる誰かの声で、うとうとしかけていた、意識が戻る。


「雪?」


 乗車口に広がる景色の方へ顔を向けた。


 確かにところどころではあるが、道端に、少し雪が地面を白くしている箇所がある。


 何処に向かっているのだろうか…


「そろそろドアを閉めます。この車両は極北に向かっています、かなり寒くなるので、ご了承下さい。」



「極北……スノーブルグ極北地帯か…」


 雪国に避難か……これは先がキツそうだな…


 この子を連れて、どうやっていくのか…目の前に座って眠る男は、どうするつもりなのだろう。


「まぁ、なんとかなるもんだからな。」


 心配することはないだろう。雪国だろうが砂漠だろうが、一人残されて野垂れ死ぬ環境にいるわけじゃない。


 死ぬことはないはずだ。


 だが、心の痛みは別だ。


「……」


 今眠るこの一人少女は幼くして、両親を失くして、雪国でこっそりと過ごすことになる、その未来にどれほどの痛みがあるのだろう。


 今はスヤスヤと眠る可憐な姿。その身体に宿る、幼い意識はどれほどの傷をかかえて生きていくのだろうか…


「……俺には想像がつかんな……」


 


 冷え切った車両のなか、眠気が数段強く襲ってきた、瞼を任せ。ゆっくりと目を閉じた。


 

 目を閉じて考える。


 その子と俺の人生の差を。


 その子より長く生きていても、その子が抱えた痛みを越えるほど、辛かった記憶はない。


 俺とはなんだろう。俺の価値とは何なのだろう


 生きていて、意味があったのだろうか。

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