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アンセストリー  作者:
1/3

プロローグ 「人間」

 よく分からない、なぜ、こんなことになっているのか。 

 愛とはなんだ? 家族とはなんだ? 

 死をつきつけられ、人の群れの中に嘆くものがいる中で、俺には「余白」があるだけだった。

「……」


 妙な解放感が渦巻く中で、思い出に残る存在がなんであったのか、まるで夢であったかのように薄れていく。 


 俺は今どこにいるのだろう? 



 繊維化の病、身体が植物に成り代わっていく病気だ、正確には成り代わるではなく、寄生した胞子が宿主の血肉を栄養源に増殖していく。


 それが人間の「形」を上書きしていくといったところだ。 


 これには有効な薬が今はない状態だ。回復した事例は全くなく、今もなお手探の状態だ。


 それが君たちの家族の命を奪った「植物」の形態の一つだ。現時点で「アレ」のことはこれ以上分かっておらず対処法も模索の状態だ。



 胞子雲が来る前になった避難警報の美しくも寂しい音楽とともに、どこかの専門家が言っていたことを思い出す、それを聞いていた家族や親戚の顔が微妙に変化したのが印象的だった。もういないが…


  切羽詰まった人間は自分達の家族だけを生かそうとするのが、妙だ。助け合いとかいいながら、奪い合いを死を目前にして暗黙の了解と成り果てていた、自分の家族すらも、なんてな 


 避難輸送車に乗りながら、薄れた記憶をたどる。


 疲れる一日だ、立て続けに大きく出し過ぎだ、

 神よ……なんてな……薄れた清々しい気分もだんだん憂鬱になっていく。タバコでも吸うか。


 ポケットから一箱取り出し、傾いた煙草から一本取り出した。


 輸送車のドアのない開けた入り口の手前で座り夕日の空を見ながらくわえて火をつけた。 


 車内は静かだ、すすり泣く声さえなく、外風と輸送車の騒音だけが、空気を紛らわす抗うつ剤だ、

今だけは忘れられるのだろう。


 煙草のようなものか。普通はそうなるんだろうな。


「ふぅーーー」


 俺もなんか言えたらいいのだろうか……無理だろうけどな。


 夕日に照らされ、黄色の胞子雲が赤みを帯びる、人によっては憎きものであれ、恐怖であれ、それは美しい。でもその美しさが脅威を裏付ける証拠なのだろう。


「感慨深いもんだな…」



「これから寒くなるので、ドアを閉めます、毛布も渡しますので今日は車内で寝てください、移動に時間がかかりますし止めるわけにもいきませんのでご了承ください」


 気づいたら意識を失っていた、目覚ましのアラームとなった義務感の帯びた冷たい声。


「ったく…だるいな」


 こんな状況で寄り添う気持ちすらない音声だ、あいつだけ車から降ろしたいのだが、どうにかできないか。


 もう空も暗いんだな、あれから結構経ったのか


「……ずいぶん明るい夜だな」


 雲もなく青暗い鮮明な空と小さな星が控えめにに煌めいていた。


「ねぇねぇ、おじさん、ママとパパはお星さまのところにいったの?あの星だよね、こっちみてくれてるもんね?」


 親が両方いなくなった訳か……となると施設の関係者か、それとも親戚か、たまたま拾ってしまった子供なのか。


 いずれにせよ、あいつ自身も大変だろうからな。 子供に対する対応が冷たいのも分かる。

 他のやつもだんまりだからな。目をつむりかけている訳か。


 しょうがない 


「そうだね、あそこにみんないるさ、みんなに顔を見せてくれるからね、大変だったね」


「おにいちゃんのママとパパもおそらにいっちゃったの?」


「そうだよ、君と一緒さ、でもときどき、見に来てくれる、今みたいに」


 代わりに話し相手をしていると、一人の男がうざそうに、体を傾けた

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