養蜂の指南書
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それからも、10日ごとに皆で集まり、1つの書物の解読を進めていった。実験を繰り返し、何度も何度も改良を重ねて、ひたすらにそれを繰り返す。そして、皆で成果を発表し合う。そうすると、10日もあれば、文字の1つや2つは特定できてしまう。人海戦術は流石だ。各々が担当する文字を決め、それをひたすら実験で何かを探り当て、1つが解れば、芋づる式に次の文言が出てくる。それをひたすら繰り返し、辞書をどんどんと分厚くしていく。その作業を淡々と熟し、また1つの書物の解明が済んだ。
「養蜂の指南書か……。どうする?」
「養蜂は全部の村でやって貰いましょう。甘味の確保は大事よ?」
「そうですよ。砂糖なんて高くて手に入らないんですから、蜂蜜は貴重な甘味です」
「それに保存食としても蜂蜜は良いですからね。基本的には腐りませんし」
「まあ、そうなるよな。これも冬の間に研究できて良かったな。流石に次の春には間に合わねえが、養蜂箱も作らないといけないんだろう? しかも作って蜜蜂をそこに引っ越しさせないといけない訳だ。まあ、その方法が書いてあるわけなんだが。これなら、森に入らなくても、蜜蜂を探さなくても、蜂蜜が取り放題になるんだろ? すげえよな」
「そうだな。養蜂のやり方が解っただけでも有難い。というか、今からではどちらにしても間に合わん。流石に今年は農地を広げる方を優先するだろうからな」
「ああ、そういえば、フレイルが来てから一気に内務官が消えたのよね。あれって、村に魔法を教えに行ったらしいわよ?」
「ああ、あの魔法な。まあ、畑仕事をするなら、あの魔法は欲しいよな。普通に耕すのは苦労があるだろうし、寒村だろ? そもそも農耕牛なんて居ないじゃないか。そこでそれだけの手数が増えれば、一気に寒村を脱出できるわな」
「そうなんですけど、商会の手を借りないと厳しいとは思いますよ? 種麦が少ないので、幾ら農地を増やしても、麦が無いと植えられないですし、食べる分が無ければ、かなりひもじい思いをしますから。2年目からは楽が出来ますけど、1年目は結構辛いです。だから、今は必死に春野菜を育てているんじゃないですかね? 食べ物が無ければ、生活は出来ませんから」
「じゃあ、蜂蜜は暫くはお預けか……」
「折角の甘味なのに……」
「いや、これの解読が終わっただけでもすげえだろうよ。まだ50日程度しか経ってないのに、1冊終わったんだぜ? このまま行けば、かなりの冊数が読めるだろうよ。同じ文字もあるんだろうし、結構読み進められるんじゃねえか?」
「うむぅ、それなんだが、1冊目が燻製の作り方で、2冊目が養蜂の指南書だろう? 魔法関連の話はもう、関係ないんじゃないか? なんというか、これって昔の何かの説明書であって、魔法技術とは関係ないんじゃないかって思えてきたんだが」
「それはあり得る話なのよね。どの書物が魔法関連の書物なのかが解らないのよ。というか、そもそも魔法関連の書物なんてあるのかしら?」
「……どう言う事だ?」
「そのままの意味よ。王都も解らない書物を写本して渡している訳でしょう? それなら、王都ではある程度読めている書物は、魔法関連のものなんじゃないかしら? それで、こういう技術指南書なんてそもそも魔法と関係が無いから、読み進められない。解らないから写本して皆に買い取ってもらっている。つまりは、ここにある文書は、何らかの技術書である可能性が高いのよ。魔法に関係している書物に関しては、王都が独占しているのではないかしら?」
……それはあり得る話だ。魔法関連の書物は、そもそもある程度読めるのだと仮定すれば、そんな書物は出てくる訳がない。地方に軍事力を持たせるようなものだからな。だから、あえて魔法とは関係なさそうな書物を寄こして解読させる。それで実績が積めれば、王都へと招集して、魔法関連の書物の解読を手伝わせる。そういう仕組みなんじゃないかと。
だが、こちらとしても利益がある。内政関連の書物を2つ読み解いたおかげで、内政に関しては充実しそうではある。畑の拡充、鉄の入手、塩の入手、肉類の流通、蜂蜜の入手。これだけでも、かなりの成果である。地方の内政としては、これで正しいとは思う訳だ。まあ、2つは私が持ち込んだものだが、3つは書物を読み解いた結果である。流石に私も燻製の作り方なんて知らないし、養蜂のやり方なんて知らない。そんな知識が得られるのだから、内政を回すための技師としての役割は遂行していると思う。まあ、魔法の研究とは言えないかもしれないが。
「でもまあ、出来ることはありますよね? 蜂という文字が解った訳ですから、毒という言葉が解れば、蜂の毒は作り出せるわけです。それを作りだせれば、……まあ、嫌がらせ程度の攻撃は出来るでしょうね。ちょっと魔法に落とし込むには、難しい様な気もしないでもないですけど、出来ないことはないかと思います。暴徒くらいなら鎮圧できるんじゃないですかね?」
「まあ、そういう使い方もできるが、難しい魔法になりそうだな。だが、蜂の毒を舐めたらいけねえぞ? 蜂の毒は、危険な奴に関してはかなり危険だ。樵もかなり警戒して森に入る場所もあるくらいだからな。場所によっては、かなり危険な蜂も居るんだ。嫌がらせで済む様な魔法にはならないとは思うがな」
「……詳しいな。領地がそういう場所だったのか?」
「まあな。そう言う事だから、蜂って言っても結構な種類が居る。蜜蜂は可愛いものだ。特に危険性も無いからな。だが、危ない蜂は本当に危ない。10年に2、3人は死ぬからな」
ああ、スズメバチやアシナガバチの話か。確かに危険な蜂だ。アナフィラキシーショックは怖い。1度目は良いのだが、2度目以降が怖い。耐性が付けばつくほど悪化するからな。そういう毒も作ろうと思えば作れるようになる。内政の研究でも良いが、そういう発想の転換が必要にはなってくるだろうな。……逆に言えば、ワクチンなどの抗体を作ることも可能になってくるだろう。まあ、その辺は科学の分野でもあるからな。非常に難しいとは思うが。
「とりあえずは、来年の今頃には、蜜蜂を探しに色んなところに行くことになるんじゃねえかな? そうしたら、養蜂も始められるんだし、蜂蜜だって入手し放題になるだろう」
「まあ、それもあるかもしれないな。養蜂がどのくらい成功するのかにも寄るんだろうが」
「全部で試せば、1つくらいは成功するんじゃないかしら? 成功したら、蜂蜜は結構な値段で取引させると思うわよ?」
「そうね。甘味は人気だもの。わたしも絶対に欲しいわ」
「まあ、解らないでもないが、養蜂の邪魔だけはするんじゃないぞ? 一応、蜂が生き残るための蜜も必要なんだからな?」
まあ、甘味はな。砂糖が基本的に高いのだ。甜菜なんかも無かったしな。サトウキビはもっと南の方で栽培されているだろうし、砂糖の入手経路は謎なのだ。まあ、詳しい事は知らなくても問題ない。最悪は魔法で出せばいいだけだからな。砂糖も水と炭素で生成可能だ。まあ、そんな事を教えられるのかと言われたら無理だが。最終手段という奴だな。出来れば、甜菜を手に入れたい所ではある。砂糖は輸出するには良い武器だからな。蜂蜜も良い武器にはなるが。……女性陣を見れば、食いつくす気満々の様なんだが。流石にまだ、そこまで蜂蜜は取れないとは思うぞ? まずは養蜂箱を増やすことから始めないといけないだろうからな。食用に回ってくるのは、相当後の話なのではないかとは思うのだが。




