塩を生成する魔法は
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「つまりは、この書物は、保存食を作るための手引きになるのか?」
「そうなるわね。……この通りに読み解けば、だけど」
「一気に読める様になったな。だが、これが魔法とどう関係してくるんだ?」
「そもそもだ。この文字が使われているのが魔法の文献であるという仮定は、間違いだったと言う事になるぞ?」
「そうなるわよね……。でも、この書物、役に立つのかしら?」
「そうですね。役には立つと思いますよ? 保存食の作り方が失伝しているのであれば、ですけど。まあ、単純にこれは燻製の作り方の手引きって感じですよね。お肉の保存に役立つとは思いますけども。そもそも肉の保存って出来ているんですか?」
「いや、聞いた事がないぞ? 肉なんて捌いたら直ぐに食べないと悪くなっちまうだろ?」
「だよな? 肉の保存なんて聞いた事がないが?」
「肉なんて滅多に食べないしね」
「そういえば私も肉を保存したなんて話は聞いた事がないですね……。首都の食堂でも、殆ど肉なんて食べたことが無いですし」
そういえば、肉なんて殆ど食べたことがない。大体が野菜だったんだよな。肉が出てくるときは、大抵、何かのパーティーをやっている時の残りって感じで肉が出てきたくらいなんだよ。と言う事は、肉の保存なんて殆ど誰も出来ないのでは? 燻製の方法なんて誰も知らないのではないか。そう思えてくる。野菜なら何とか日持ちはするんだけど、肉は持たないからな。冷蔵庫がある訳でもないし、冷凍庫なんてある訳がない。燻製の方法は、それだけでもかなりの役に立つとは思う。
これを文章にして、畜産業をしている村に送れば、肉の流通が始まると思う。燻製にすれば、数か月は肉の保存が出来る。まあ、温度や湿度も関係してくるんだが、そこまでは書いてないからな。燻製の作り方が書いてあるだけなんだよ。
「でも、肉が流通すれば、もの凄く利益になるんじゃないかしら?」
「普通は生きたまま町まで持ってくるからな」
「それが村で出来る様になるんでしょ? それは凄い発見なのではないかしら?」
「ただ、懸念点もあるな……」
「ああ、塩が大量に必要だって事だよな?」
「塩は絶対に必要な品であって、高級品でもあるわよ? 簡単には手に入らないし、どうしようかしら?」
「だったら塩は魔法で作りましょう。幸いにも、塩の文字はこれなんですから、魔法を使って塩を作りだせば良いんですよ。魔力を使って出せば良いんです。簡単じゃないですか」
「だが、魔法陣を作るには……。いや、まて、そうか」
「なるほどなあ。俺たちよりも発想が柔軟だな」
「まずは属性から決めなければならないが、塩を作るのは何属性だ?」
「塩は土属性ですね。分類的には鉄を作るのと変わりないですし」
「だったら魔法陣を作ってみるか。まあ、形は円形でも良いだろう」
「そこから図形を選ぶんですよね? だったらこう、図形を作るのはどうですか?」
「良いんじゃないか? とりあえずはそれで行こう。文章はどうすればいい?」
「鉄は……ちょっと参考にならないわね。意味が解らない文章があるし。土を作る魔法を参考にしましょうか。では、これでどうですか?」
「……僕は悪くないと思うよ。発動はすると思う」
「俺も同意見だな。発動はするんじゃないか?」
「では、使ってみようか。……そら!」
初めて作ったにしては悪くないとは思う。私でもそうする。文章は土の流用だが、それでも構わないとは思う。流石に化学式を放り込むわけにはいかないだろうからな。塩と言っても、単純に塩化ナトリウムだけではないからな。その他ミネラルも含まれる。そうなってくると、単一の物質である鉄よりも、土の方が相性は良いだろう。決して難しい事ではないのだ。単純に発想力の問題だ。
「……出来てしまったな。真っ白な塩が」
「ええ、出来たわね」
「マジか……。マジかあ」
「一応味見を。……確かに塩だ」
「ねえ、これどうするの?」
「さあ? これって夢じゃないよな?」
「夢ではないですよ。まあ、使ってみた感じはどうでした? 効率的な意味で。ここからはひたすら図形を変化させて効率化を図っていくんですが、使用した感じはどうでした? まだ無駄がある感じがしませんでしたか?」
「そうだな……。無駄には感じた。まだまだ効率化は出来ると思う。だが、何処を変える?」
「そうですね。一番単純なのは、図形を変えるって事ですね。この図形が合っていない感じがするんですよ。そうですね、私ならここをこうして、こっちをこうすると思うんですよ」
「なるほど? だとすると、ここは抜かないといけないのか」
「でも、そこを抜くとこっちが駄目にならないかしら?」
「いや、それならこっちにこうしてだな」
「……なるほどな。見えてきたぞ。ここがこうだな? そうして、ここがこうだ」
「ああ、それだな。じゃあ、文字はどうする? これだけだと足りないぞ?」
「そうですね。ここまで図形が変わると、文字が2倍くらい必要になるので、こういう場合は繰り返しで良いと思いますね。同じ文言を入れる事で、相乗効果が得られる時もあるんですよ。とりあえず、これを使ってみましょう。同じ人が使わないと、効率の話が出来ないと思うのでケルトさんがやってください」
「僕だね? ……そら!」
またしても塩が出来た。……大体同じ量が出てきたか。と言う事は、魔力の消費量がどうだったかって話になってくるんだけど、どうなんだろうか。塩を生成する魔法は、平民でも使えなければならない。確実に使えるというレベルにしておかないと、燻製づくりに塩は不可欠らしいからな。なんでも、生肉に塩を塗り込んでから、煙で燻すらしいから。これが本来の作り方なのかは知らないが、少なくとも、書物的にはそれが正しいってなっているからな。燻製を作りたければ、塩が必須になると。そうなってくると、平民でも作れなければならない。さて、どうなったのか。
「……うん。さっきよりも確実に効率化は出来ている。でも、まだ改善の余地はあると思うんだ。具体的にはここが無駄だ。ここをどうにかして削りたい」
「じゃあ、こうしましょうか? これならどうかしら?」
「ここからはこまめに確認しましょう。ケルトさんお願いします」
「解った。……そら! ……駄目だ。それでは負担が増えた」
「じゃあ、これをこうするのはどうだ?」
「それならこっちもこう変えた方が良いのでは?」
「じゃあ試すぞ。……そら!」
そんな感じで魔法を組み立てては発動させて、組み立てては発動させるという繰り返しの作業に入った。こうなったら後は時間との戦いだ。発想力は6人分。良い感じの形になるまでは、感覚で掴むしかない。私も塩を生成する魔法は初めてだからな。最高効率の形は解らない。だから、思ったことはどんどんと口にする。こういうのは見た目と感覚で何とかするしかないのだよ。厳密にやれば、何かしらの方程式があるのかもしれない。だが、それを探すよりは、トライ&エラーをする方が余程早いのだ。ここからはひたすらに形を変えて、文章を微修正していく。修正しては試し、試しては修正する。こういう時には植物紙の方が楽だ。消せるからな。本当は砂に書くのが一番いいんだが、砂だと余分に消す可能性もあるからな。コスト的には砂が一番なんだが、植物紙でも十分に対応できる。
試行回数は120回を超えたとは思う。それだけの実験を繰り返した。皆が納得いくまでの戦いだ。何処までの違和感を許容するのかの勝負になってくる。完全なのは不可能なのだ。だが、ある程度の効率化は必要である。そうしなければ、平民が使えないからな。




