ロジエラ商会
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家族と別れ、カントさんの行商についていく。そんな日々だったんだけど、そろそろ終わりを向かえることになる。3つの村を順番に周り、行商を終えたカントさんが向かったのが、カントさんが拠点にしている町だ。そこで大商人の所に挨拶に行くことになっている。その町では、その商人が一番大きいらしい。まあ、色んな場所に支店も持っているので、本当に大規模にやっているみたいなんだよな。
「さあ、もう少しで僕の住んでいる町が見えてくるよ。そこからが本番だけど、フレイル君は大丈夫かい?」
「大丈夫かどうかは、あってみないと解らないですけどね。どういう人なのかってのを見てみない事には話にならないとは思いますけど」
「まあ、それはそうか。でも、そこまで酷い人では無いからね? というか、今回は本店の長が直々に見てくれるって話だし、結構な大事になっているんだよ。伯爵家に魔法の研究者を出すって事は、そのくらいは凄い事なんだよ? まあ、それでも王都の研究機関には負けるんだけどね。向こうにまで行けたら、本当に凄いよ。是非ともそこを目指して欲しいよね」
「まあ、出来る限りの事はやりますけどね。伯爵様がどんな人なのかが解らないと意味がないとは思いますが。伯爵様ってどういう人なんですか?」
「うーん。……余り評価は良くないんだよね。僕も今回になって初めて情報を仕入れたけど、商売にも明るくないし、内政にも興味がないって感じなんだってさ。だから、手っ取り早く成果を出して、王都を目指した方がいいかもしれない。僕が言えることは、そのくらいかな」
「……なるほど。無能だと。まあ、そうでしょうね。無能で無ければ、エツタ村が寒村なんて事にはなってないでしょうし。内政に興味なしねえ。それはそれで問題だな。どうするかね……」
ローレンディア伯爵が無能なのは、なんとなくだが解っていたことではある。内政が全然行き届いていないんだから、無能の烙印を押されても仕方がないとは思うんだよな。俺はそう思う。内政は領主の鏡。内政が貧相な所は、その地を治める領主が無能なのだよ。少なくとも、私はそう思う。内政が整ってくれば、一気に発展するとは思うんだがな。それをやらないって事は、そう言う事なんだ。
「さあ、着いたよ。一旦荷物を置きに行くから、ちょっと待っててね。そこから大商人の所、ロジエラ商会に向かうからさ」
「解りました。今日にでも行くんですか?」
「こういうのは早い方が良いんだよ。商人は早さを競うからね。利益になりそうな話は早い方が良いんだよ。これは鉄則だから」
「なるほど。それなら急いだ方が良いんですね。解りました」
フットワークが軽いのは良い商人の証拠だ。どんなことにも挑戦する様な商人の方が良いのである。ただし、全部に足を伸ばせば良い訳ではない。儲からない仕事には、足を向けない判断力も必要になってくる。そのことを考えないといけないとは思うんだけど、今回の事に関しては、早い方が良いのは確かだろうな。
荷物を置いて、再度出かける。そして、大きな商会にやってきた。……なるほどな。確かに大きい商会だと思う。この辺でも1番大きな建物だしな。さて、どうやって交渉するのかなんだけど、どうしようか。
「ここがロジエラ商会だよ。さて、準備は良いかい?」
「勿論、大丈夫です」
まあ、交渉はそこまで難しいものではないだろう。精々が聞き取りを行うだけで。身構えても仕方がないとは思う。なる様にしかならないんだからな。
「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件でしょうか?」
「シベル商会のカントです。例の件の少年を連れてきたとお伝えください」
「お話は聞いております。どうぞ、こちらへ」
……なるほど。既に話は下まで通してあると。有能だな。来ることが解っている証拠でもあるし、末端まで情報をちゃんと伝えている。それは十分に出来る事ではない。簡単にはいかないぞ。教育もしっかりとされているんだろう。そうじゃないと、情報の共有なんて出来ないからな。
コンコン
「失礼します。例のお客様を連れてまいりました」
「通せ」
「失礼いたします」
そこには、恰幅の良い男性が座っていた。……なるほどな。威厳はバッチリだ。カントさんは細身の体型をしているが、正反対だな。商人は痩せている方が良いとは限らない。贅を尽くせば、簡単に太ることは出来る。そこからダイエットをしないといけないとなると、それにも金が必要だったりもするんだよな。太れることも才能だ。それだけ良い暮らしをしているって事だからな。
「で? シベル商会のカントだったな。本当にその子供がか?」
「はい。そうでございます」
「ふむ……。儂を見て怯えんか。それ程肝が座っているのだろうな。良かろう。まずは座れ」
座る。……思ったよりも硬いな。もうちょっと品質を上げられるとは思う。そもそもコイルスプリングなんてものは無いだろうし、これでも仕方がないのかなとは思うが。
「……ほう? なんだ? 何が疑問に感じた?」
「いや、意外に硬いなと思ったまでだ。もう少し工夫が出来るのではないかと思った次第だな」
「っく、はっはっはっは! そうかそうか。面白い少年だ。これでも高級品だぞ? だが、そんなものと断じられるほどに柔らかいものを知っているとなる。……本当に寒村の出か?」
「ああ、そうだ。私は寒村で生まれたよ。まあ、知っている事と体験していることが違うのは、どうしても仕方がない事だとは思うが?」
「……いや、惜しいな。これを本当に伯爵の所に押し込まないといけないのが惜しい。カントよ。よくもまあこんな化物を見つけたな」
「いえ、偶然でして……」
「いや、そうだろうな。こんな人物は探しても出てこない。その辺に居た方が不自然だ。それだけ目立っただろう。面白い。これなら儂もあの伯爵に推薦を出してやってもいい」
「その口ぶりからして、伯爵は相当な無能なようだな」
「っくっくっく、無能で片付けば良いがな。はっきり言っておく。伯爵はお前を冷遇するだろう。それでも伯爵の元に行く気があるか?」
「魔法の勉強がしたいからな。出来る環境であればいい。無能は放置しておくに限るな」
「そうかそうか。……となると、儂も準備をしておかないといけないだろうな。その内だが、お前はリベリエルという町に飛ばされるだろう。さて、一体何時まで持つのかだな」
「リベリエルという町に飛ばされるのか? その町には何がある?」
「何もないのよ。何もないから飛ばすのだ」
「ああ、左遷か。なるほどなるほど。そのくらいには無能だと言う事が解っているのか」
「ああ、そう言う事だ。さて、リベリエルという町にも、ロジエラ商会の支店はある。そこには話をつけておく。一応は、儂と共に首都エールエールに行ってもらうが、程なくして飛ばされるだろう。そこで何が出来るのか。みせて貰おうか」
「左遷されることが解っているのであれば丁度いい。出来る限りの事はやってやろう。リベリエルを大きな都市に変えれば良いのか?」
「ああ、そう言う事だ。投資はしてやる。リベリエルを成長させてみろ。ロジエラ商会の名に懸けて、お前を支援してやる。名はなんという?」
「フレイルだ。魔法の真理を解き明かすものだと、覚えておいてくれ」
魔法がどのようなものなのか。それを追求する。それこそが今世の私の真の目的だ。今までは寒村でしか学べなかった。実地研修しか出来なかったのだ。これからは知識を蓄える時間だ。私の生活は、魔法で出来ていると言っても過言ではないのだよ。




