① 高校生なぞ仮の姿…、な訳はない
(恋愛物…ってことになるのだろうか…。ちゃんと書けた気がしない作者です。なんだか何処かで見た作品をパクって、パッチワークにした様な気分しかしない…。
それでもまあ、死蔵するくらいなら、とりあえず公開しちゃえの精神。なんとかなるっしょ。)
全4話を、今日から1日1話ずつ、16時に投稿していきます。
「あの赤い星が、さそり座の心臓『アンタレス』だ。
──アンチ、アレス。ギリシ神話の戦神にして火星の化身『アレス』に、対抗するもの、と名付けられた星だ。心が踊るな…。」
「赤いねー! うん、なんかワクワクする感じがするねー!」
大きな川の土手の上、2人の高校生が、双眼鏡を携えて夜空を見上げている。
町灯りも疎らなこの場所は、川から来る湿潤な空気が心地良く、夏場の天体観測にはうってつけであった。
「アンタレスは、赤色巨星。赤く超巨大な恒星であり、同じく恒星である太陽と比較すれば、その実際の直径は太陽の400倍とも600倍とも言われている。」
「ほへー…。」
「その太陽も、直径は地球の100倍を超える。100個の地球を横1列に並べても、太陽の端から端まで届きすらしないと言う訳だ…。
そんなちっぽけな地球の、表面積3割程度の大地の、そのまた更に小さな島国たる日本。そこに住む我らの、なんと矮小なことか…。」
「壮大だねー…。」感心…
天体の基礎知識を、聞く人が聞けば背中が痒くなる台詞と共に吐き出す私服男子高生。
やれやれと首を振り、顔に手をやる仕草が、実に厨二病。
そんな話を真面目に聞く女子高生は、この宇宙の広さを精一杯感じ取る為に、大空を視界に収めんと必死であった。実に良い子である。
そんな彼女の反応に気を良くした男子は、ここぞとばかりに追加設定を披露する。
「だが、そんな人間達を見守ることも『監視者』たる『俺』の役目…。
星の巡りからして、そろそろ『暗黒教団』の『信奉者』どもが動き出す頃──」
「あ!! 流れ星!!」
「うえ!? ほんと!?」
バッと顔が上げるがもう遅い。
愚かな妄想男子を嘲笑うかの如く、流れ星は過ぎ去っていた。
「消えちゃった。」
「あー…、見たかったなぁ──いやっ!? や、やるではないか、今井 未来! 僕──この『俺』ですら見逃す流星を捉えるとは!」
「たまたまだよー。」
悔しい気持ちを吐露しつつも、謎の上から目線で虚勢を張る厨二病患者。
そんなことを気にする素振りもなく、横に立つ彼女は朗らかに笑う。
「その名前が示す通り、その眼球は『未来』を見つめる、か…。」
「大げさだよー。」
これがデートであれば最悪の褒め言葉だろうが、単なる高校生の個人的な天体観測なのでノーカウントである。
多分きっとギリギリセーフ──セーフ? いや、セウトぐらいは──?
やっぱり普通にダサい…。
「よし。そろそろ帰──『帰還』するか。もう遅い時間だ。」
「え? あ、本当だ…。」
彼女は、「塾の帰りに自習室で勉強をしている」体でこの場所に来ている。あまり時間を浪費する訳にはいかなかった。
「UFO、今日も見えなかったね…。」
「心配──案ずることはない…。その『運命』が来れば、向こうから現れる…。
今は知識を蓄え、『宿命』に備える時だ…。」
「ふふ。ありがとう、加古君。」
「いやいや──礼など、不要…。」ニヤける顔面を必死で抑えつつ…
真っ赤になった耳を夜の帳で隠しつつ、停めてあった自転車を回収する。
ダイナモ発電のライトを倒し、彼女を荷台に座らせて、ゆっくりと安全運転で橋を渡った。
彼女を家の近くまで送った後、厨二男子はまだ誰も帰ってきていない自宅へと自転車をひた走らせる。
スキップをしたくなる気持ちを抑えつけ、今夜は良い夢が見れそうだとウキウキしながら。
──興奮して、親の帰宅時間を過ぎても眠れず、スマホを触って電子の海にダイブしてしまった監視者は、翌日の学校に遅刻しかけることになるのだった…。