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サンレイジョウは卒業式の祝賀会で婚約破棄を言い渡されるかもしれない~美味しいカレーは王国を救う~

22作目です。


よろしくおねがいします。

「伯爵令嬢!貴様の所業にはもはや我慢ならん!よって騎士団長令息であるこの俺は貴様に婚約破棄を申し渡す!」


 今日は楽しいクリスマスじゃなかった卒業式である。そろそろクリスマスネタも考えないとね。でもってここは卒業式後の祝賀会の会場。バイキング形式で多種多様な料理が並んでいる。


 それはともかく見た目だけは割と良い体格の令息が赤髪の令嬢に対しいきなり婚約破棄を言い渡した。当然非常識なことであるが割とよくあることなので周りも今年の余興位の感覚である。


「ほほう?我に向ってその物言い。覚悟があってのことであろうな?」


 美人ではあるが少しきつい印象のある伯爵令嬢が答える。


「無論だ!俺の友人たちは在学中に何人も貴様に呼び出されてそのまま帰ってこなかった。貴様が拐かしたのであろう?そんな非道な真似をする人間と結婚生活など考えられん。申し開きがあるなら言ってみろ!」


「申し開き?下らんな。婚約破棄は受けて立とうではないか。しかし一方的な破棄であるならばうぬの過失によりペナルティーが発生するがそれも覚悟の上であろうな?」


「俺の過失ではない。貴様の非道による断罪なのだから俺に責はない!」


「戯けたことをぬかすでない。これを見よ!」


 そう言って伯爵令嬢が一枚の赤い紙を取り出す。


「何だ、それは?」


「これは召集令状!学園内で非行に走り学業を疎かにし、尚且体力を持て余している連中を判別し、前線に送ることを使命として王国よりその権限を与えられた、我は誇り高き召集令嬢!消臭令嬢ではないから間違えるなよ!?」


「なんだと?」


 騎士団長令息が慌てる。


「婚約破棄により我の婚約者としての立場を失い、卒業の祝の場を乱すという非道ぶり、そして有り余る体力。貴様の名前をこの紙に書いておいた。準備が整い次第、東部戦線に向かうが良い。激戦地ゆえ生きて帰れればよいがな」


 そう告げられた騎士団長令息は膝から崩れ落ちた。



 今年の余興第一弾が終わって会場に余裕が生まれたのも束の間さらなる大事が会場に振り注ぐ。


「侯爵令嬢!貴様の所業にはもはや我慢ならん!よって宰相令息であるこの僕は貴様に婚約破棄を申し渡す!」


 今度はインテリ眼鏡風の令息が青髪の令嬢に対して婚約破棄を言い渡す。


「いやですわ。この天丼ぽい何か。せめてもう少しひねりを加えていただかないと」


「未来の宰相であるこの僕にお笑いの才能を求めるんじゃない!まあいい貴様には数多くの生徒を拉致監禁した疑惑が出ている。そうでないというのであれば身の潔白を証明してみせよ!でなければ嫌であろうが何であろうが当然婚約破棄だ!」


 宰相令息がそう言って侯爵令嬢を睨む。


「いえ、別に婚約の解消は嫌ではありませんわ。というかそんな事を気にしていらしたのですね」


「そんなことだと?何人もの学生が拉致監禁され中には戻ってこなかったものもいるのだぞ。それをそんなことだと!」


「だって仕事ですもの。仕方ありませんわ」


 そう言って侯爵令嬢が青い紙を出す。


「何だ、それは?」


「これは逮捕令状!学園内にいる犯罪に関係する容疑者を逮捕するため裁判所から発行されるものですわ」


「何故貴様がそんなものを持っている!」


 先程までの強気から一転焦りを含んだ声で宰相令息が問いかける。


「だって私は誇り高き逮捕令嬢!伊達にミニスカ履いていないんですわよ。あなたには公職の不法な斡旋とそれに伴う収賄の容疑が出ています。ということで、逮捕しちゃ~うぞ!」


「おのれ!官憲の犬め!」


「違いますわ。私が官憲で、官憲が私。犬などと見くびってもらっては困りますわ!」


「畜生めエエエエ!」


 こうして宰相令息はフラッシュをたかれながら両手を拘束され連行されるのであった。



 こうして前座達が処分されていく中、ついに本日のメインイベントが開催される。卒業生たちは、この時のために誰ひとり欠けることなく来賓たちのつまらないスピーチなどなどを耐えてきたのである。


「公爵令嬢!王太子である余は・・・・・って、婚約者が話しかけているんだからカレー食うのを止めてくれる?」


 割とキラキラ系の金髪イケメンが金髪ツインテールの令嬢に指摘する。


「そうは言われましても、黄色といえばカレーですもの」


「なんでバイキングでカレーの皿抱えて頬張っているの?というか君は余と同じ金髪だよね。決して黄色じゃないよね」


「ちゃんとツインドリルで悪役令嬢やっているんですから細かいところは良いじゃないですか。悪役に礼状もありませんし、放っておくと没個性で存在感無くなりそうじゃないですか?」


 公爵令嬢は至極当然のように指摘する。


「なんで未来の王妃が三枚目キャラやってるんだよ。王室の権威台無しだよ!もっと頑張ってよ!」


「カレーといえば香辛料。香辛料は金と同じ価値がある。買えるものはロイヤルカードで!どや~」


 王太子の指摘に公爵令嬢がドヤ顔で答える。


「なんの宣伝だよ。胡椒が金と同じ重さで取引なんて言うのは某トルコ帝国による交易路の独占でのパニック相場だから。コロナ下のマスクとかトイレットペーパーと同じだから!っていうか勝手に王室費を使おうとするな!」


「良いではないですか。殿方は“おもしれえ女”が好きと聞き及んでおりますわ。三枚目のイエローこそ社会の需要を満たしているというものですわ。だいたい主人公はレッドと決まっておりましてよ。王国船隊サンレイジョウ!」


 ちなみに王国は海洋国家で貿易立国である。そう言いながらカレーを食べ続ける公爵令嬢。あっトッピングに唐揚げを載せた。あとのせサクサクです。


「だからイエローじゃないでしょ!余も一緒にされるからホントやめてよ。というか何で最高位貴族の令嬢が三枚目キャラなの?そんなんだから王妃の資質に疑義があるなんて言われるんだよ。お転婆だけど健気で可愛らしかった余の公爵令嬢ちゃんを返してよ!」


「大丈夫ですわ。お転婆は変わっていませんから。それにカレーも食えない人生なんてこちらからお断りです。ナンがなければライスで食べればいいじゃない!」


「そんなとこだけ王妃らしくするのはやめてよ。というかそれ亡国の王妃でしょ。縁起悪いって!」


 王太子泣きそうである。


「偉大な方ですよね。こんな使いやすいフレーズを残しただけでもすごいと思います」


「本人のセリフじゃないらしいけどな!」


「細けえことは良いんですよ。じゃとりあえず婚約破棄ということで!私の真実の愛はカレーに捧げる!」


「軽っ!国の行く末がかかっているのに驚きの軽さ!というか余からは婚約破棄のコの字も出てないよね。勝手に婚約破棄したことにしないでくれる?」


 項垂れる王太子に対し2杯目に取り掛かる公爵令嬢。今度のトッピングはヒレカツらしい。


「う~ん、インドカレーも捨てがたい。次はバターチキンかな?それともシーフード?」


 3杯目の予定を考えながらラッシーを飲む公爵令嬢。もはや王太子など眼中にない。そしてついに王太子から決定的な一言が


「最初に君に告げるはずだった言葉だけど、来月から王国内の三ツ星カレーシェフはすべて王宮料理人になるから。和風も洋風もインド風も全部だ!婚約者じゃなくなったらもう食べられないからね」


 王太子が静かに放ったその一言ですべての動きを止めた公爵令嬢。そして


「今までのご無礼、誠に失礼をいたしました。平にご容赦くださいませ。王妃教育もこれまで以上に頑張ります。だから・・・・」


「だから?」


「捨てないでええぇぇぇぇぇ!!!」



 こうしてメインイベントは王国では珍しく男性側の完全勝利で終わった。公爵令嬢はドレスのまま土下座する勢いであったとか。毎年数回ある卒業式での婚約破棄の勝率は男女比で1;9程度。王家が絡むと更に低確率のため大きな評判を呼んだ。そしてもともと公爵令嬢が王妃の地位に興味がないことが知れ渡っていたこともあり、密かに賭けをしていた連中は軒並み外したという。一人勝ちをしたのはリンゴほっぺの妹王女殿下。嫁に行く際の持参金が増えてホクホクだったらしい。王太子にカレーシェフ作戦を授けたのは彼女だった。


「せめてイエローではなくはちみつ色と言いなさい」


 王太子が公爵令嬢をそう窘めたこともあり


「林檎と蜂蜜には勝てなかったよ」


 という伝説が残ったという。そして二人の結婚式では国中でカレーが振る舞われた。



 その後王国では王太子と妹王女、サンレイジョウの活躍もあり最盛期を迎え、それとともに様々な新作カレーが出来たという。


 めでたしめでたし。


カレーが食べたくなったので書きました^^;


夜中で飯テロになった方ごめんなさいm(_ _)m


いつも女性側の勝利というのもつまらないので味付けを替えてみました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 凄く面白かったです! 捨てないでと叫ぶ御令嬢、可愛かったです。 テンポの良さと、ちりばめられたネタの数々に目が回るような面白さで楽しかったです! [気になる点] 青い髪の侯爵令嬢、足ブレ…
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