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旦那ちゃまとわたし  作者: しーの
9/11

フレンチトースト、或いはパン・ペルデュ。貧しい騎士の友たるこの退廃的な食べ物(9)

ほぼ同時に更新してますので、前話からお読みください。

 五日後、前回見た時よりもイマドキな格好の伯爵家の従僕ショーンさんがやって来た。その手に木箱を抱えた彼は、相も変わらずとっても愛想が良い。と、いうかチャラい。

「やあやあ、こんにちは」

「こんにちは、ショーンさん。今日はお休みですか?」

「うん、半休ね。これを届けたら仕事は終わり。で、そのまま飲んでこうかと」

 同僚らしい若い男性が二人、彼の後ろから手を振っている。従僕らしく皆揃って背が高くてスタイルがいい。皆が皆、伯爵家のお仕着せではなく私服を着ているところを見ると、半休をもらったのは彼だけではないようで、どうやら麦藁色の髪の青年が引いている荷馬車に乗ってきたようだ。

「あらまぁ。なら、お客さんですねえ。いらっしゃいませ」

 玄関を掃いていた手を止め、あらためて頭を下げて挨拶する。

「リリーちゃんは礼儀正しいねえ」

「円満な人間関係を築くには、まず挨拶。基本ですよ」

 良きビジネスパーソンたるには、普段からの姿勢が大切なのだ。ましてや我が家は接客業である。評判という目に見えぬパラメータを常に気にしておくに越したことはない。

「キミ、本当に十一歳?」

「父の教えです」

 嘘です。わたしの中身がおばちゃんだからです。うん? あ、いや、完全に嘘というわけでもないか。

 うちのお父さんもお母さんも、そのあたりの躾は厳しい。

「あー」

「ところで、お届けものとはどちらに?」

「え? そんなの決まってんじゃん。リリーちゃんにだよ」

「……はァ?」

 わたしが眉を寄せると、ショーンさんがニヤリと笑った。

「こないだ旦那ちゃまがおっしゃってただろう。ちゃんと取り寄せたんだぜ、ミスター・サイラスが」

 マジっすか。

 はっや、めっちゃ、はっや。

「合衆国産の最高級小麦粉もあるよ」

 ショーンさんの指し示す指先に視線を向けると、栗色の髪の青年が荷台から重そうな布袋を下ろしていた。

 この時代の小麦粉は目の詰まった丈夫な布に入れて運ばれるため、倹約を旨とする家庭では袋が空になると布巾やタオルとして再利用される。それを見越してカラフルなプリント生地を使用した小麦粉袋が、合衆国で一時期大流行するようになるのはもう少し先の時代だ。

「それはそれは……」

「うん。で、ミスター・サイラスからの伝言なんだけど、三日後には旦那ちゃまをお連れするからってさ」

「……は?」

 思わず箒の柄を握りしめたわたしをよそに、ショーンさんは「コレどこに運んだらいいのかな」と呑気に訊いてくる。

「えっと台所に……あ、お兄ちゃん」

 話し声を聞きつけてか、厩の方からネッドがやって来た。

「よう、ネッド」

「何だ、ショーンさんじゃん。ちわっす。そっちはお仲間?」

 この間の訪問時に仲良くなったのか、わたしに対するよりもっと気安い挨拶を交わしている。これだから陽キャは。

「そうだよ。こっちがエリック、馬のトコにいるのがジョシュアね」

「よろしく」

 軽く帽子の鍔に手をかけたエリックさんが笑った。うーん、白い歯が眩しい……。

「よろしくお願いします」

「馬頼むよ。俺たち半休で飲みにきたんだ」

「了解っす」

 ジョシュアさんから馬の手綱を預かったネッドは、穏やかそうな鹿毛の子を優しい手つきで撫でている。ネッドはわりと動物から好かれるタイプなのだ。

「申し訳ないですけど、お二人とも台所まで運んでいただいてもいいですか」

 わたしは玄関の扉を開けて、お館からやってきた彼らを招き入れた。

思ったより調べることが多かった……。迂闊……。

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