駄作な小説
男の書く小説は売れなかった。主な理由としては、世界観や倫理観の無さ、登場人物の理解し難い言動、つまりは合点が行かないのだ。彼自身はこれ以上の設定を作ることは難しく、また不登校だったので、語彙力や一般知識も欠如していた。そのため、男は何故この作品が売れないのか疑問でしかなかった。
そこで男は、友人の紹介で、とある博士のもとを訪ねた。その博士は夢について研究をしており、夢で見たものを映像化する機械を発明した。要はそれを元に小説を書くのだ。男は博士の研究所の扉を叩いた。
「しつれいします。」
男が扉の前でそう言うと、白衣を着た男性が扉を開け、こう言った。
「やあ、どうも。話は聞いております、どうぞお入りください。」
博士は扉を開けたまま、対になっている椅子の一つに腰掛けた。
「どうぞ、そこに座ってください。」
「あ、はい。どうも。」
男は研究所の扉を閉めた後、ぎこちない様子で、椅子に腰掛けた。
その後、男は博士から名前や住所、何故夢を映像化したいかなどを詳しく聞かれた。そしていくつかの質問を終え、とうとう今回の実験が始まった。
白く、柔らかい、高反発のベッドに、男は寝かされた。その後頭に大きい機械を取り付けられ、そのまま布団を被った。男はしばらく寝れなさそうだったが、数十分後に男は深い眠りについていた。
男は眩しい光により、目を覚ました。頭を上げようとすると、やけに重みを感じ、男は実験のことを思い出した。目の前にいる博士は研究所の窓のカーテンを開けている。その窓から見える光は朝の光だと男は感じ、慌てて時計を探した。時計は七時を指している。男は、この研究所で一夜を過ごしたのだ。男が上体を起こしたままでいると、博士はベッドの隣にある椅子に座った。
「お目覚めですか。どうです、良い夢は見れましたか。」
男は夢のことをあまり覚えていなかった。
「ああ…あまり…覚えていませんね。」
「ですが、確実に夢は見ているはずです。この機械を使い、先程見た夢をディスクにおさめます。しかし、この作業には時間が非常にかかります。なので後日、お宅の家に届けることとします。」
そう言い、博士は男の頭の機械を取り外し、男を帰らせた。そして男は自身の夢に期待をし、次の日を待った。
次の日の朝、男が郵便箱を見ると、約束通り一枚のディスクが袋に入っていた。男は得も言えぬ興奮と好奇心に刈られ、急いでその内容をテレビで見た。
男は感嘆の声を漏らさずには居られなかった。その内容と言うのは、自分が中学生の頃のいじめっ子達にいじめられ、その後自分の才能が開花し、そのいじめっ子達を蹂躙すると言う映像だった。男は急いで机の前に座り、その内容を少し変えた別の話をパソコンに打ち込んだ。男はあまりの興奮に一人言が止まらなかった。
「タイトルはどうしような…『無双』は格好いいから入れておきたいな…そうだ!ハーレムを作ろう…!強い男には美女が似合うから辻褄が合うし、これで男達は寄ってくるし、一石二鳥だ!…後は『落ちこぼれ』…『最強』…『天才』をいれて…。やっぱり作者の言いたい事もいれないとな………『~ですが何か?』っと。こうすれば馬鹿でも分かるだろう…やっぱり俺には才能があったんだ!」