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銀の軌跡  作者: タレット
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憂鬱

 不規則な振動のなかで考えていた。

 荒廃した風景のなかを一台の車両が既に何度も通って出来た軌跡をなぞりながら進んでいる。その車両のなかは閑散としている。その車の座席に深く腰かけ、右腕から陰鬱な痛みを感じながら、窓から差込む光によって鈍く光る銀色の腕を眺めながら深く溜息をついた。同時に無線がわずかなノイズを走らせ、若く冷たさを持った声が耳を打つ。


「目標地点まで30km。ハウンド。そろそろ時間だ。」

「了解。」

「よろしく頼むぞ。」


億劫になりながらも


「・・・了解。」


渋々そう続けた。

 またわずかなノイズが走り、不規則な振動と共に静寂が訪れた。窓から差し込む光が一層強くなった気がした。深くフードを被って、また溜息をついた。


-------------------------------------------------------------------------------------

 突如蔓延したウイルス”オーダー”によって、世界のバランスは崩壊した。オーダーは瞬く間に世界を覆った。感染した人類、はたまた動植物の多くは特異な変化を遂げ、怪物へと成り替わった。人々は彼らを総称して”ヴァリアント”と呼称した。ヴァリアントは元の容姿を連想させるが、それとは別な特異な”異形”へと変貌し、人類にとって対抗し得るのが困難な能力によって人類を攻撃し、人類はその人口の約40%失い、この世界において居住し得る土地の約60%を失った。しかしある日、人類に抗体を持つ者が現れ始めた。その者たちから人類は汎用抗体を生成し、人類はオーダーの脅威から逃れることが出来た。しかし、ヴァリアントの発生は未だ留まることを知らず、人類を脅かしていた。だが、オーダーはヴァリアントを生み出すだけではなく、人類に力を与えた。オーダーに感染し、克服出来た者の多くは、ヴァリアントと同じく特異な能力を得ることとなった。力を手にした人類は”エヴォルバー”と呼称された。その特異な力を用いることがヴァリアントへの最も有効な対抗手段として、その存在は人類の希望となった。

-------------------------------------------------------------------------------------

 暇潰しにと読んでいた教本を眺めながら、


「なにが人類の希望だよ。」

 

無表情のまま悪態をつき、乱雑に机の上に転がした。


「まあ、兵士に説明するならこの位がいいのかな。」


呟きが無機質な室内に響いた。椅子にもたれかかり、目の前にあるポツンとある椅子をぼーっと眺めた。大きな窓から差し込む鬱陶しいくらいに眩しい太陽の白々しい光が視界を遮った。いい天気ではあるが、その眩しさに目を細めながら溜息をついた。内ポケットに手を突っ込もうとしたが、ふと左手首にある古めかしく細かな傷の入った腕時計を確認し、半開きになり転がったままの教本の横にある一枚の書類を手に取ろうとした。その時不意に左奥からノックする音が、がらんどうな部屋の中に響いた。


「どうぞ」


そちらへは顔を向けずに視線だけを向け、扉に向かって短く返答した。横開きの扉がローラーの転がる軽快な音を響かせ開き、その先には年端もいかない少女が現れた。


「失礼します。」


取って付けたような敬礼をして声色を強張らせているルイーザを一瞥した。小さな顔に大きな瞳、長いまつ毛、特にその碧眼は覗くと吸い込まれそうになった。金色の長髪が腰ほどまであり、お堅い戦闘服は似合わない。まるでアニメキャラのコスプレだった。いや、人形かな。線も細くすぐに壊れそうだった。


「・・・座ってくれ」


そんなくだらないことを考えながら、手に取ろうとした書類を持ち上げ、そちらへ視線を移しながら促すと、少女は軽く会釈して部屋の中央へと向かうのが視界の端で見えた。書類を流し目で確認した後、視線を少女に移した。空虚な部屋の真ん中にあった彼女には似合わない安っぽい椅子に座る前に、こちらに向かって律儀にお辞儀をしてから座った。その様子に育ちの良さを感じながら様々な疑問が湧いたが、面倒なので考えるのを止めた。


「じゃあ、自己紹介してくれ。」


彼女が椅子に座るのを確認し、一瞬の清寂が訪れた後、そう促した。


「はい!ルイーザ=キャロルです!本日付で対ヴァリアント特務部隊に配属になりました!よろしくお願いしまっしゅ!」


緊張からか上擦った大きな声が反響した。場が凍り付いた。ルイーザと言う少女は羞恥に身をよじり、肩を戦慄かせた。


「ルイーザね。よろしく。」


このまま彼女が噛んだことを引きずって無駄な時間を食われるのは避けたかった。なのでなかったことにした。しかし、ルイーザはいまだ気にかけているようだった。無視して続けた。


「ちなみに俺もこの支部で新設された特務部隊の新しい隊長になった。コードネームはハウンド。名はカサネ=ミョウドウ。よろしく。」


「よろしくお願いします・・・」


ルイーザの声はその場に留まっていた。

タレットです。

処女作になります。物書きには興味があったのでやってみようと言うことで始めてみました。

作品のテーマとしては”意思”を念頭に置いていきたいと思います。

連載として投稿していきます。ふとした思い付きですが、全体としての構成は頭では出来ています。しかし、細部を詰めるために時間を掛けていきたいなと考えています。なので不定期投稿です。

コメントは励みになりますし、意見は後学のため寄せていただけると大変うれしく思います。

個人的に戦闘の場面で上手く描写出来るか不安なのでかなり時間が掛かると思います。気長に待っていただけると幸いです。

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