プロローグ 一人になった私
ーーー私はこの世界《現実世界》に未練はない、、
といっても、別に死にたいとかそういう話ではない。
話は少し変わるが私「中村 哀」の生い立ち。
5歳の時に両親は不慮の事故に遭い、父方の祖父に引き取られて暮らしていた。
そう暮らしていた。
過去形というのも実はついさっき祖父の葬儀が終わったところだ。祖母は私が引き取られる以前に亡くなっていて、母方の方は共になし。頼る親戚もなしとなり、天涯孤独となった。
唯一、私に遺されたものといえば祖父から受け継いだ剣道の流派 『神影流』 の免許皆伝である。
私にはわからないが、代々中村家に受け継がれてきた流派らしい。祖父曰く私には剣の才能があるといい、特に拒否する理由も他にやりたいことがあったわけでもないので流れのままに教え込まれた。
16歳で習得したのは歴代で私が最年少らしいが特段嬉しいとも感じない。ただ言われたことをそのまましただけのことである。
しかしそれも私の代で終わりになるのだろう。
色恋沙汰なんて無縁な私に次の代だの考える余地すら一切ない。両親が亡くなる以前は私も喜怒哀楽のある普通の女の子だったと亡くなった祖父も言っていた。
しかし、両親を亡くして以来、私には感情というものがいくつか欠落してしまったらしい。欠落というより感情の起伏があまりなくなったと言った方がいいのかもしれない。
だが、そんな私だって嬉しい時は嬉しいし、悲しい時は悲しい。
ただ感情の起伏がないだけ。それだけの話だ。
別に生きる分にはなんの不都合もないし、祖父も変に気を使うような人ではなかったのでそれはそれでありがたかった。
変に気を使われ、腫れ物に触るかのような対応をされてはこっちも困るというものである。
だって私にとってはこれが普通なのだから。
そんな私を祖父は我が子のように扱ってくれた。
そこは素直に嬉しい。
でも、そんな祖父もこの世にはいない。
涙はこそ出ないが悲しい。
そんなこんなで私の生い立ちは終了
「はぁ、、」
祖父の墓前にため息をつき、私はしゃがみ込みポツリと、
「じいさま、私これからどうしたらいいのかな、、」
そう言って目を瞑り静かに深呼吸をした。
その時頭の中で声がした。
「それではあなたのその剣の技、別の世界で役立ててみてもよろしくて?」
その声はなんだか安心する声で、私はその声に耳を傾けた。そして声の主はこう続けた。
「あなたがその剣の技を如何なく発揮できるために微力ながら力を授けます。そしてどうか弱き者の助けになってあげてください。さぁ目を開けて」
私はゆっくりと目を見開いた。
しかし、そこにあったのは目の前にあったはずの祖父の墓ではなく、全く違う世界が広がっていた。
この現実の世界ではなく異なる世界が。
私はぽつりと呟いた。
「、、、ここはどこ?」
趣味で書いてるため不定期に掲載しています。
でも、なるべく早く掲載できるように鋭意制作していきます。
よろしくお願いします!( ;∀;)