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18. 妖精女王

 どこへ行くのだろう、とシルヴィアはシェリーの後を追いながら考える。

 すると見覚えのあるピンクの髪の少女と緑の髪の美男子が駆け寄ってくるのが見えた。 


「もぉ、どこ行ってたんですかー?」


 ぷくっと頬を膨らませて言うレイナに「ごめんごめん」とヴェントゥスが軽く謝る。キースは「2人で楽しかったー?」とによによしている。


「あら、お知り合いですか?」

「ええ、そうよ」

「シルヴィアさんのお知り合いならぜひ一緒に来てくださいな!」


 シェリーはそう笑って羽をぱたぱたさせた。シルヴィアとヴェントゥスはこうなった経緯を軽く説明しつつシェリーの後を追うことにした。






「大きい……!」


 着いたのはこの辺りでは1番の大樹で四季折々の花々が咲き誇る美しい木だ。どうやら幹全体が家のような作りになっているらしい。シルヴィアたちはきょろきょろしながらも幹の中に足を踏み入れた。


「ちょっと待っててくださいねー」


 シェリーはそう出て行く。玉座が目の前にある物々しい空間で待てと言うのは結構疲れるものだ。

 すると。


 突然ふわっと暖かい雰囲気に包まれた。そしてシルヴィアたちの目の前には美しい女性が立っていた。

 オレンジ色の足くらいまである髪には花冠が載っている。


「わたくしはストレリチア。わたくしの家臣を助けてくれてありがとう」


 その女性、ストレリチアはそう優しく微笑んだ。

 その威厳ある雰囲気にシルヴィアはハッとした。そしてカルマが言っていたことを思い出す。


(きっとこの国の女王か何かなのだわ……もし妖精女王だとしたら)


「私はシルヴィア・セレスタイトです。お目にかかれて光栄ですわ」


 シルヴィアが優雅に一礼すると、ヴェントゥスたちも続けて挨拶をした。


「もう、シェリーは体が弱いのだから無理をしないでと言っているのに……」


 ストレリチアがそう言うとシェリーはえへへと苦笑いをした。


「わたくし、あなたとお話がしたいわ」


 ストレリチアはシルヴィアの前まで歩み寄ると微笑んだ。あまりの美しさにシルヴィアは息を飲んだが頷く。

「楽にしていてくださいね」とストレリチアはヴェントゥスたちに声をかけるとシルヴィアの手を優しく引いて歩き出した。




「あなた、人間でしょう?」


 唐突に問われ、シルヴィアはさすがに女王の目を欺くことはできないと申し訳ないと頷く。


「でも、あなたの瞬時の行動力、本当に素晴らしいわ。薬学も……そして魔術も一級品ね」

「い、いえ、私なんて……私よりレイナ様の方が素晴らしいですわ」


 ストレリチアは一瞬キョトンとすると「うーん、そうかしら」と首を傾げる。


「あなたはきっと心が綺麗なのね。応援したくなる」


 心が綺麗だと、そんな風に言われたのは初めてでシルヴィアは照れくさくなる。


「私はその魔術のせいで避けられてきたので……そんな風に言って頂けて嬉しいです」

「……そうなの? あら、じゃあきっとあちらの片思いといったところなのかしら、初々しいわ」


 ストレリチアはふふふとあどけなく笑う。片思い? とシルヴィアはストレリチアを見つめ返す。


「ねえ、お礼をするわ。シェリーを助けてくれたお礼と、応援したくなる素敵な2人を見せてくれたお礼にね」


「何がいい?」と手を取って言うストレリチアにシルヴィアは思い切ってお願いすることにした。


「魔法石を少しでもいいのでくれませんか」


 ドキドキしながら返答を待つ。するとストレリチアはふわっと笑った。


「ええ! お庭に咲いているのなら持っていって構わないわ!」


 ぱあっと顔を輝かせてからシルヴィアはあれ、と耳を疑う。


「庭に……咲いている?」




 連れて行かれたお庭に魔法石は美しく咲き誇っていた。

 透明な宝石が花弁のように重なっていて輝いている。ストレリチアは一本手折るとシルヴィアに手渡した。


「ぜひまた来てね。今度はお茶でも飲みながらたくさん話しましょ」

「……はい、また来ますわ」


 シルヴィアはストレリチアを見て柔らかい笑みを浮かべる。


「さあて、王子様が待ってるから早く行かなくちゃね」


「それにいい感じに役者も揃っているようだしね」とぼそっと呟いてストレリチアは楽しそうに笑ったのだった。



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