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15. もっと素直に

 妖精の王国。妖精と魔法に満ち溢れた国。

 妖精女王が国を取り仕切り守っているという。

 カルマがいうには、代々村長が守る書物にその国のことと、入り方などが示されていたのだという。

 そしてそこにはシルヴィアがなんとしてでも手に入れたくなるような代物も書かれていた。


「妖精の加護を受けた魔法石……」

「ものすごい魔力があるらしい。アレキサンドライトだっけ、の比じゃないくらいの力を持つとか」


 まだ見ぬ魔法石を思い浮かべてシルヴィアはうっとりとした。きっとものすごく綺麗なのだろう。そしてその使い道を考えてハッとする。


「その魔法石、霊除けの効果もあるかしら!?」


 そう声をあげてからチラリとヴェントゥスに目をやる。小さな霊や魔物くらいならシルヴィアの贈ったアミュレットで事足りるが……たまによくわからない大きなのを連れているとゾッとする。


「ある。てかシェルジュさんはあんたはそう尋ねるはずだからと言っていたんだけど……すごいな」


 そう呟くカルマを見てシルヴィアは改めてジェルジュは何者なんだと首を傾げた。今更だけど、ただの村長があんなに立派な魔術室を持っているわけがないのだ。


「まあ……それは妖精女王が守っているそうだから、手に入れるのは至難の技だと思うけど」

「でもそれが手に入れば、もう霊たちに悩まされずにすみますね、ヴェントゥス様」

「え、ああ、そうだな……」


 ヴェントゥスは歯切れ悪くそう返した。ようやく悩みの種から解放されそうだというのに、なぜ嫌そうなんだろうとシルヴィアは不思議そうに首を傾げた。

 すると、カルマがものすごい大きなため息をついた。


「2人で行って来れば? その魔法石はその王子のために使うんだろ? だったらシルヴィアだけに取りに行かせるのはおかしいだろー」

「いいね、2人で――」

「へ!? いやいや……そういえばレイナ様がそのような場所を探しているとおっしゃってましたわ! だからレイナ様も、それにキース様も喜びそうね!」


 咄嗟にシルヴィアはそう叫んだ。今2人きりで行動なんて辛い。でもレイナ様と3人ではもっときつい。


「……じゃあ、4人で行こうか」


 ヴェントゥスはむすっとしながら言う。隣でカルマは声を殺しながら笑い転げている。


「そうとなったら2人に伝えに行きましょう」とシルヴィアはカルマにお礼を言うと王宮の方を向く。


「結構こじらせてんですね」

「……君は僕を怒らせたいのかな」


 カルマがヴェントゥスの耳元でそうからかうように笑う。ヴェントゥスはため息まじりでそう返答する。


「いいや。ただ、もうちょい素直になればいいのになって思っただけ。別に応援はしてないけど」

「素直に……か」


 カルマが素っ気なく言った一言をヴェントゥスは確かめるように呟いた。






「ええ、妖精の王国ですか!?」


 目を丸くするレイナにシルヴィアとヴェントゥスは頷いた。キースは興味深そうにシルヴィアたちの話に耳を傾ける。


「つまりシルちゃんと殿下は、その魔法石を探しに妖精の王国へ行くということだね?」

「はい。キース様とレイナ様がいれば心強いと思ったのですけれど……」


 シルヴィアがそう言うとレイナは目を輝かせる。


「ぜひとも行きたいです!」

「そういえばレイナ様は以前そのような国を探しているとおっしゃってましたけれど……」

「え? ええ、そうです! 妖精の王国のことを言っていたのです!」


 レイナはニコニコと、シルヴィアたちを見回して


「そうと決まったらさっそく行く準備をしましょう!」


 と言った。そしてシルヴィアの背をぐいぐい押すとヴェントゥスとキースを残したまま部屋を後にした。




 そんなシルヴィアとレイナの様子をキースはじっと見つめたまま、ヴェントゥスに尋ねる。


「……4人で本当にいいんですかー?」

「いや、よくはないけど」


 不機嫌そうにそう言うヴェントゥスにキースは呆れたようにため息をつく。


「それに、あのレイナもさ……」

「それについては調べてるから」


 ヴェントゥスはどこか冷ややかな眼差しで返答する。


「僕ももう少し素直になろうと思うんだ。特に……好きな女性に対しては、ね」


 ふっと笑みを浮かべたヴェントゥスを横目で見てキースは吹き出すように笑う。


「面白くなりそうー」

「4人とは言ったけれど! 配慮してくれよ……」

「何を?」

「その……2人にしてくれるとか……」


 ヴェントゥスはもじもじと顔を赤くする。キースは今まで見たこともないくらい陶酔しているヴェントゥスにほんわかしてしまう。


「まあ、そのくらいなら全然協力するけどね」


 キースは初々しい2人を想像してそう笑ったのだった。



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