1話
こんにちは
異世界で兄妹は如何なる夢をみるか?
季節は夏・お盆の時期だ。セミたちはけたたましく大合唱し、太陽は容赦なく大地を照らしつけ、神社の階段を登るガタイのいい大男をへばらせる。2人分の荷物を持っているのも原因の一つだろう。大男、つまり俺こと、清瀬優輝。身長2mの年齢は22歳だ。なんでこんな自己紹介してるんだって?この暑さだ、頭が熱にやられておかしくなっても不思議ではない、つまりそういうことだ。
と、その隣で鼻歌交じりに軽くひょいひょい登っていく女の子がいる。身長は170cm、体系はスレンダーで、セミロングストレートの黒髪、白いTシャツにデニムのショートパンツ、俺の視線に気づいたのかこっちを見て笑う姿は可愛らしい。「早く行こうよ」と急かす姿は、凛とした姿の中に幼さをのぞかせる。
傍から見たら独身男性憧れの存在、彼女に見えるだろう。まぁ、実際は彼女ではなく俺の実妹の清瀬衣里17歳だ。最近の悩みは、実年齢よりすこし年上に見られがちな事らしい。因みに、ここだけの情報だが彼氏は居ない。聞いた話によると「お付き合いしたいが、お兄さんが怖すぎて無理」だそうだ。HAHAHA!!シスコンだって?うるさい、衣里が可愛くて何が悪い?俺の宝だぞ。
なぜそんな二人がこの炎天下の中神社の階段を登ってるかって?この先のパワースポットがなんかすごいらしくて、両親の墓参りのついでに隣町まで来たって訳だ。神社巡りが趣味の衣里もハッピー、愛車でドライブが趣味の俺もハッピー。まさにWin-Winの関係ってね。それにしても今日は
「あちぃ……」
ついつい口に出てしまう。これだから衣里から独り言が多いとか言われるんだろうな。
「何を当たり前の事を言っているのだよ、お兄ちゃん。なんたって夏だもん」
この暑さの中、ケロっとしている衣里が「ヤレヤレ」と言いたげな仕草で馬鹿にしてきやがった。全くいつも俺のこと馬鹿にしやがって。かわいい奴め。
「畜生太陽め、体面積が人よりも多い俺をピンポイントで攻撃しやがって」
とりあえず太陽に八つ当たりしておく。
「太陽がお兄ちゃんにピンポイント攻撃したら、一瞬で蒸発して消えるけどね。そんなバカなこと言ってないで早く行こうよ」
親指で目的地をクイクイと指しながら、笑顔で早く階段を上るよう促す。
「イエス、マイシスター。速やかに行動を開始します」
マイシスターからの命令は絶対です。
「それと、上についたら冷たいジュースが欲しいな」
曲がりくねった階段の先にある自販機を指さしながら、マイシスターからさらなるオーダーが届いた。
「それくらい買ってやるよ」
元々買ってやる予定だったし
「やったぜ」
笑顔で親指を立ててうれしさを表しているのだろう。ジュース一つでここまで喜ぶとはチョロイ。それにしても
「全くかわいい奴め」
そう言いながら頭をわしゃわしゃとなでる。恥ずかしいのか、照れくさいのか、髪が乱れるからか、衣里の笑顔が少しぎこちない。
「んがー、撫でるなー。そんなことより早く行こうよ」
「そうだな。喉渇いたし、早く上に行って冷えたジュース飲もう」
仲良く横に並び、上にある自販機、ではなく神社に向かって雑談しながら階段を上っていく兄妹。この先の先に災難が待ち受けるとはつゆ知らず。
----------------------------------------------------------------------------
「因みに衣里は知ってるか?」
「何を?」
「親指を立てて”いいね!”ってやるこのジャスチャーの名前。」
「なにそれ!それに名前あったの?!」
「あるある。サムズアップと言うらしい。」
「知らなかった……!」
「所説あるがもともとはローマのコロッセウムで使われてたサインだ。」
「流石お兄ちゃん無駄なことだけ詳しい。」
「一言多いぞ。」
「「ははは!」」
……そんなくだらない会話をしながら階段を上っていく。
ゆるりと書いていきます