エピローグ
「やっぱりあんたたち、付き合うと思った」
乃亜はココロに耳打ちした。
「えっ?私たち、まだ付き合ってないよ」
まだだってさあ……。
十分に恋に落ちてるじゃない。
「あいつに言われたんだよね。ココロを応援につれて来いってね」
「そうなんだ」
「隼人、きっとココロのこと好きだから」
「でもあいつにフラれたんだよ」
「照れてるだけだって」
「そ、そうかな」
ココロは耳まで真っ赤になっている。
乃亜とココロが校門を出て行こうとすると、隼人が走って追いかけてきた。
「なあ、今度さ、去年の全国優勝のチームとやるんだけど、応援に来てくれよ」
隼人は乃亜の顔を見ながら、言った。
「ああ、いくいく」
乃亜がこたえた。
隼人は遠まわしにココロを誘ってるのだ。
「でさ、もしうちのチームが勝ったら……」
隼人はじっとココロを見つめて黙り込んだ。
「で、もし勝ったら、何なの?」
乃亜は聞いた。
「ココロ……、俺と付き合ってくれないか」
やった。ついに告った。
やればできるじゃない、隼人のやつ。
乃亜は満足だった。ハイタッチしたい。
でもココロはうつむいたままだ。
乃亜がひじでココロを突いた。
「うん、いいよ」
ココロは真っ赤な顔でそう言った。
春がきた。
ココロに初めての春が来た。
隼人とココロは、手をつないで恥ずかしげもなく登校してくる。
乃亜の恋は桜とともに散ったが、ココロの恋は始まったばかりだった。
なんと去年の優勝チームに勝ってしまったのだ。
練習試合とは言え、それはあまりにも快挙だった。
去年のウインターカップの覇者に勝ったのだ。
バスケ部のみならず、学校が本気で全国制覇を夢見だしていた。
新学期が始まると、バスケ部は入部者が殺到した。
そして新学期とともに、隼人率いるバスケチームは全国制覇に向けて始動した。
とりあえず4月の末に行われる高校総体地区予選に向けて、きびしい練習が始まっていた。
隼人にとっては3年最後のチャレンジだ。
夏に行われる全国大会に向けて、本気でバスケに打ち込んでいた。
ただ乃亜には一つだけ寂しいことがあった。
失恋の痛みを引きずっているのに、ココロが付き合ってくれないのだ。
ココロは4月になって、バスケ部のマネージャーになったのだ。
「ああ、私も恋しなきゃ」
乃亜は一人でケーキをホール食いした。
おしまい