表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/4

これからも、それからは……未定である。

はい!間に合いませんでしたw

「才川ってこのスマホゲームやってる?」


 牧原は珈琲店に入り、注文するや否や俺にスマホを見せつける。スマホの画面には『スローライフキング』の画面が大きく出ていた。……お前もやってたのかよ!


「……ちょっと前までな。最近は暫くログインしてないな。それがどうした?」


「このゲームさ、めっちゃやり込んでるんだよ私」


 牧原は悲しそうな顔でそう語る。奇遇だな、俺もちょっと前までそうだった。

 でも、別に悲しい顔をしなくても、誇らしげにしてほいい。俺は満足しているのだから。


「それで私と張り合おうと躍起になっていた奴がいてさ、何回か自分家自慢してたの」


 懐かしい思い出だ。

 数日前だけど。牧原も俺と同じ様な体験をしてるんだな。


「それがどうなったんだよ?」


「うん……お互いに勝敗がつかなくてさ、向こうが『僕の負けです』って言い出しちゃったの!凄く不完全燃焼でさー!どう思うよ?」



「……あーー」


 どう思うも何も、それ俺じゃねぇかよ!!

 お前がMAKIかよ!

 世間は狭いレベルじゃねぇよ!

 日本中でプレイしているゲームの、それも気になるプレイヤーが眼の前で対峙するってどういうことだ、おい!


 俺はツッコミを心に留めて、牧原の方を見る。

 落ち着いた茶髪に薄めの化粧、高校の時よりかは流石に大人になったが、雰囲気は変わらないものだな、こいつも三十になるんだよな。


「……何見つめてんのよ?」


「ああ!悪い。お前の城には勝てないと思ったんだろ?別に不満に思う点はないだろ」


 実際、そう思っている。MAKIの造る城や周りのアイテムの配置の仕方には可憐さがあったのだ。ただ単に課金でアイテムをうめた俺とは違う。


「……実は、向こうから『張り合うの止めません?』ってきてさ、思わず維持を張っちゃたのよー、それでお終いってのがさー……あれ?今()って言わなかった?」


「……あ」


 見事なまでにボロが出た、いい歳こいて何やってんだ俺は……。


***

「あんたがSAIだったの?世間が狭いってレベルじゃないでしょ!」


 それ、さっき思いました。


「知り合い二人で阿保みたいに課金して張り合ってたの?いい歳こいて何やってんのよ、私達」


 ホントですよね。ははっ。


 牧原は俺を見て頬を膨らませる。「いい歳こいて何やってんだ」とツッコミしたかったが、思いのほか可愛かった。


「……勝負しなさい」


「……はい?」


「まだ勝負はついてないのよ!ここまで課金させたんだから責任とってよね」


 その言い方は、結婚の時に使うもんじゃないのか?課金は自分でやったことだろうに……まあ、いいか。


「わかったよ、白黒つけようか。いい歳いったからこそ譲れないものがある。仕事なんかよりもな」


「……それはどうかと思うけど一理あるわね。じゃあ続行ってことで!」


「はいはい」


「それと……」


「何だよ、口籠って?」


「連絡先教えてよ、こんな阿保やれる奴も、話す相手もいないのよ、この年になると」


「……全く同じだな、俺達。将来、結婚するかもな」


 俺が笑顔でそう言うと「それはない」と冷たい表情をされた。……分かってるって。

 牧原は「へへ」と笑い、俺と連絡先を交換した。



 その後、二人でぶらぶらと買い物を楽しみ、帰路に着き、()()()()()()のだった。


『負けないからな、MAKI!』


『コテンパンにするからねSAI!』


 二人のいい歳した大人達の戦いは終わらない。

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ