忍16
猫と神様そして・・・・
平穏が戻ったある日
神殿に猫べえは黒キジと一緒に訪れていた
「スクルド様こいつはあなたがつかわされたのですか?」
黒キジを撫でながら尋ねると
「お前それ神界の猫じゃぞしかも
そんなに懐かせるのかなり難しいのに
名まで受けてくれるなんて
羨まし過ぎる」
スクルドは自分の欲求を口にする
黒キジはどこ吹く風で
安心しきった様子で猫べえの足元にいる
「そうなんですか、でもこいつ町のみんなにも愛想がいいですよ」
その言葉にさらに沈み込むスクルド
「はあーどうせわしらにはそんな態度は見せてくれんよふんだ」
そう言って悔しそうに脇をむくと
起き上がった黒キジがスクルドに近づくと
「ナーゴ」
と鳴いて頭をこすりつけ思いを伝える
「何じゃとあいつのせいでわしら猫好き神クラブは苦渋を舐める事になったのか
ふふ、安心せい今後一切奴には手出しさせん」
突然復活したスクルドは挨拶もそこそこに神界に帰還していく
そして地面には
「猫の機械化など許さん」
となぜか日本語で書きなぐられていた
翌日の夜眠った猫べえの夢の中に
スクルドが現れ
「黒キジに伝えてくれお前の同族の平穏は今後一切揺らぐことは無いとな
開発馬鹿はお仕置きしたし
神会議で全員一致で愛でる以外の行為は禁止だと採択された
これで少しは気を許してくれるかの」
そう告げて笑顔で去っていった
その後猫の周りで不埒な考えを持ったらお仕置きされたとの噂が流れる
兎にも角にも猫たちに平穏がプレゼントされたのは間違いないだろう
「さてそれじゃ仕事に行くかお前はどうする黒キジ」
荷物を持った猫べえが尋ねると
居眠りをしていた黒キジは慌てて飛び起きると
一緒に行くと足に頭をこすり付ける
かくして今日も名物になった猫べえと黒キジのコンビは
町を歩む
「おはよう二人とも元気そうね」
気軽に声をかける町の女性たち
「おおがんばれよご両人」
見送る町の男衆
「お兄ちゃん黒キジちゃんを撫でさせて」
怖がられるかと心配したのだが
子供たちはあいも変わらず黒キジを撫でにくる
本猫も盗賊退治後
気にして避けていたのだが取り囲まれて撫でまくられる
「黒キジちゃんを怖がる子なんていないよ
私たち皆会えなくなって寂しかったんだよ」
黒キジが助け出した姉妹が代表して声を掛ける
その言葉に喜んだ黒キジは猫べえの許しを得ると
子供たちと以前のように遊びだすのだった
そしてある日突然に唐突に
「こんにちは猫べえ」
ショーズの部屋に呼び出された猫べえは開けた扉をそのまま閉めて
立ち去ろうとするのだが
「「逃がさないよ猫べえ」」
両肩に手が置かれる
「国王様を連れ出していいのか忠臣二人」
振り返りもせずに後ろにいる伊吹とシェルに問いただす
「なに二人で守ってるここを襲撃するほど気合のある奴
いないから大丈夫だ」
伊吹が笑って言うと
「それに今ここにはあなたが居るし
伊吹団長に土下座をさせた史上二人目の人族に喧嘩を売る馬鹿も
いないわよ」
シェルも笑って続けるのだった
「それに来てるの国王様だけじゃないし」
シェルの言葉を続けるように
「あら帰ってしまうの猫を連れた英雄の招かれ人さん」
その女性の声とその言葉に退路が立たれたことを理解する
国王が同伴する騎士ではない女性でしかも猫べえが招かれ人であることを知りうる人物
「お前らな・ん・で王妃まで連れ出してるんだ」
「「正解」」
頭を抱える猫べえに
「いや仕方ないだろ国王陛下だけじゃなくて王妃様にまで頼まれたら
断りきれないって」
「あら、伊吹確かあなた長老様に今回の任務を拒否したら
里に出入り禁止って言われたんじゃなかったかしら?」
「へえそうなんだ確か恋人が里にいるって言ってたもんね」
シェルが茶化すと
「そう言うシェルも祖父のショーズに会いたいっていう奥の願いに押し切られた
ではなかったかな?」
国王の言葉に固まるシェル
世界一の安全地帯だよね