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光を求めて  作者: 茶碗蒸し
トンカツはどこにある。
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城下町Ⅱ

(あーーーーーー!!恥ずかしい…)


 めちゃくちゃ恥ずかしかった。

まさか、コータが豚だったとは思いもしなかった。

正解には豚ではないのかもしれないが、昨日食べたときの味も、今見た見た目も豚そのものだった。


 名乗ったとき笑われたのはこのためであったかと、軍団長が名を変えることを言ってきたのはこのためであったかと理解した。

カイロは必死で謝ってきたが、正直どうでもよかった。


(軍団長に言われた通り名を変えよう…なんていう名にしようか…わからないな…)


 カイロが横にいることに気づく。


(カイロさんに丸投げしちゃえばいっか…)


 カイロに頼むと戸惑った様子も見えたがすぐに快く引き受けてくれた。

カイロはなぜか微笑んでいる。


(こわ…なんか面白いことでもあったのかな…気持ち悪いな…)

「つ…次は……杖のところに行きたいです!」


「あ…はい!」


 カイロが怖かったため、はやく次の場所へ移動したかった。

カイロは我に返ったかのように驚き返事をした。

二人は少し上昇し周りの建物よりも高いくらいの場所まで上がる。


「あちらの建物になります。」


 紫色の、不思議な雰囲気を出している建物へ向かい降りる。

その建物は少し禍々しい感じがした。

来るものは拒むという感じだった。

上から見た印象とは少し違っていた。

上から見たときは少し禍々しい雰囲気を感じていたが、今、目の前にある建物は非常に明るい雰囲気で、来るもの拒まずという感じだ。

建物の見た目は本当にただの小屋のようだった。

木でできた小屋で、中にはびっしりと杖が飾られている。


(さっき感じた雰囲気はなんだったんだろ…勘違いかな…)


 小屋に入ってみる。

圧倒された。

木の杖、石の杖、金属の杖…赤や緑、白といった様々な宝石が埋め込まれている。

自分のイメージする杖よりもはるかにすごい杖ばかりが並んでいた。

杖のもつ不思議な雰囲気のせいだろうか。

小屋の中に少し禍々しい感じを受けた。


「シマ!」


 カイロが誰かを呼ぶ。

小屋の奥から、人が出てきた。

その人物はゆっくりと歩いてくる。


「はいはい、いらっしゃい。」


 身長は自分よりも少し小さいくらいだ。

だいたい155センチほどだろうか。

見事な白い顎髭を生やしている。


「シマ!」


「おぉ、カイロか…?久しぶりだな…お主が国軍につとめるとき以来か?」


 80歳くらいだろうか。

しかし背筋は伸びており、半袖の服は筋肉で弾けそうだ。


(こんなおじいさん…草野仁じゃん…)


 シマが自分の方に目線を移す。


「あ、こちらは国を救ってくださった魔導師様です。魔導師様、こちらはこの国一番の杖職人、シマです。」


 カイロが紹介をする。


「今日は何をお求めで?魔導師様に合う杖があるといいのですが…」


 シマは顔色を伺ってきた。

正直、顔色をいちいち気にされるのは面倒になっていた。


「杖について、知りたいのですが。」


 少し強い口調で言った。


「杖についてですか…杖の何を?」


「全部教えてください。」


 杖について、なんとなく知りたいと思った。

だからもうこの際すべて聞いてしまおうと。


「全部ですか…」


 シマは少し困った顔をした。


「おねがいします。」


 カイロがシマに一押しする。


「わかりました………杖には木、石、金属など様々な素材がございます。それぞれ特性がありますが、基本特性として木は回復系を、石には防御系を、金属には攻撃系の魔法を強化、補助する特性がございます。」


 ふむふむと頷く。

難しそうな話だ、と気を引き締める。


「それぞれの素材と魔法効果のある石や宝石などの装飾品とを組み合わせて杖はできます。しかし、杖の形はその素材によって、毎回異なる形になります。」


「僕達が指定することはできないんですか?」


 ただ疑問に思った。

杖の形を決められないとはどういうことなのか。


「杖の形は杖が決めます。杖が自分の姿を決めるのです。我々杖職人はその杖の声を聞いて、できるかぎり杖が求める形になれるよう補助するのです。」


「なるほど……」


 とりあえず杖の形は決められないということはわかった。

自分で出してしまえば問題ないが。


「自分に合う杖はどうやったらわかるのですか?」


「そこにある水晶に手をかざしてみてください。緑は回復系、赤は攻撃系、黄色は防御系の魔法を強化する杖が良いということになります。例外もありますが。」


「へー」


 シマが指差した方を見ると透き通った水晶があった。

水晶の中には白い光がチカチカと光っている。

水晶のそばまで行き、手をかざしてみる。

白い光が強く光る。


パチンッ


 音をたてて水晶が半分に割れてしまった。


「あ…すいません…」


 とっさに謝った。

自分がなにかをして割ってしまったと思った。

シマとカイロは水晶から目を離さない。

よほど高価な物だったのだろうか。

申し訳ない気持ちに包まれた。


「シ…………シマ!!」


「これ…は…まさか…」


 二人が突然騒ぎだした。

なんなのだろうか。

怒られるのではないかとビクビクしていた。


「魔導師様!」


 カイロが大きな声で続ける。。


「魔導師様!魔導師様は死の王を倒されに来たのでしょうか?」


 なんのことだという顔をした自分をみてシマが話した。


「この水晶は常人には割ることができません。いえ、どんなに優れた魔導師でさえ割ることはできません。馬人であっても、いかなる魔法、力でも不可能です。この世で半分に割ることが出来るのは死の神だけです。しかし、魔導師様も割ることができました…つまり!魔導師様!!死の神に立ち向かえる者はあなたしかいないのです!」


 突然のこと過ぎて何がなんやら訳がわからなかった。

とりあえず返事だけしておく。


「がんばります…」


 その場しのぎにはなってしまったが、別に問題はない。

自分の思い通りに魔法が出せてしまうのだから。

誰と戦っても負けるはずはない。


「魔導師様、少々お待ちください。」


 シマが小屋の奥へと行く。

少しするとシマと同じくらいの大きさの杖を持ってきた。

黒い金属だろうか、なにかわからないものでできた杖に様々な宝石がついている。


「魔導師様、この杖を貰ってください。」


(ごつっ!)


 シマが持ってきた杖を持ってみる。

見た目はとにかく大きい。

しかし、見た目ほどは重くはなかった。

そしてなにより、なぜかわからないが離したくなかった。


(どうやって持ち運ぼうかなぁ…背負えばいいか?でも背負えるかな)


「魔導師様!!王に報告しましょう!」


 カイロが叫んだ。


「は、はぁ…城に戻りますか?」


「魔導師様さえよろしいのであればですが!」


 そうはいうが、カイロの目からははやく城に戻りたいという意志が溢れでている。


「いいですよ。一緒に戻りますか?」


「よろしいのであれば!」


 自分勝手だなとも思ったが、仕方なく城に戻ることにした。


「シマさん、またなにかあったら来ますね。」


「魔導師様、いつでも来て下さい。」 


「じゃぁまた。マヨネーズ」


 城門へ移動した。


「魔導師様、私は王に報告をして参ります。もし何かあればいつでもお呼びください。」


 そういってカイロは城の中へと消えていった。


(どうしようか…とりあえず…街でもあるいてみようかな…)


 城から街へとふらふら歩いてみる。

歩きながら考える。


(本当にこれは夢なのかな…痛みは感じないけど…リアルすぎる…お腹すくし…)


 そして先ほどの出来事を振り返る。


(死の神ってなに?怖い名前なんだけど…だいたい、死の王があの水晶半分に割って、僕も半分ってことは同じくらい強いんじゃないの……あーやだな…)


 フラフラ歩いているといい匂いがしてきた。

そういえば、もうお昼頃になる。

この匂いはなんの匂いだと、匂いを追いかける。

その先にはコータ料理屋があった。


「コータか…………旨いんだよね……でもなぁ…トンカツないかなぁ…」


 店に入るか悩んだ。

国を救った英雄への褒美として、国内の店などすべてが無料になっていた。


「いらっしゃいませぇぇえ」


 元気の良い挨拶に迎えられ、こうたは店の中へ消えていった。

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