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裏と表

作者: 夏来 素麺

特に書く事はないです。

新年も春を迎えるので、新しいのでも書こうかなと思っただけです。気の迷いです。


 高すぎる訳ではなく、若干鼻にかかったような、猫なで声とはまた違う、女特有の声で、目の前の"お友達"は声をかけてきた。

その"お友達"は私の事を心配してくれているらしいようで、(しき)りに尋ねてくる。

「本当に大丈夫?」

さっきから何度も何度も飽きるくらい言っている。ねえ大丈夫?本当に?無理してない?

だから私も同じように返してあげるんだ。

「大丈夫だよ。ありがとう」

大丈夫なんて何を根拠に言ってるのかもはや分からない。何に対して感謝の言葉を並べているのかも知らない。

とりあえず一秒でも早く目の前に居る"お友達"に退いて欲しいんだ。それが本心。心配なんてされなくていい。むしろただの"お友達"になんでも私の事を知ったような立ち居振る舞いをされたくない。もう散々あなたが望むような応えは出してあげただろう。早く居なくなってくれ。いつも仲良くしてるあの子の所にでもいったらどうだ。

そう思えば思うほど"お友達"は、より私の事を聞き込もうとしてくる。本当に鬱陶しい。ウザったい。

あぁ、そうか分かった。そうやって権力のない人間を心配してるフリして、本当はただ優しくしてる自分が可愛くて仕方ないんだ。

誰にでも平等に接する事のできる、真面目で美人でクラス人気も高いリーダー的存在。皆の輪の中心。それでいて一人一人、あまり関わった事のない人ですら気にかけてあげられる。そんな完璧な自分を作り出したいだけなんだ。そしてその理想像を簡単に成りこなせる自分に溺れたいんだ。本当に汚い人間だな。こんな奴にはなりたくない。

「本当に何でもないから。一人で大丈夫。ありがとうね」

そう言うと相手の次の言葉も待たずに、少し早く歩いて私は"お友達"と別れた。


 帰り道、今日あった事をなんとなく思い返していた。

なんであんな事になったんだっけ?私はどうしていたんだっけ。あ、授業中にグループを組む事があって、周りと馴染もうとしない私は案の定余り物になってて、それをあの人、"お友達"が誘ってくれたけど、無愛想なしかめっ面でずっと居たから、なにか勘違いだか誤解だかをされてしまったのかな。きっとそうだ。

だからクラスは嫌いなんだ。グループも嫌い。周りの人間の事を考えてやらないといけない。常に愛想を無理を振り撒かなくてはいけない。そうしないと今回みたいな事になるし、そうでなくても「あいつ地味じゃね?」「マジ感じ悪い」とかなんとか言って特に迷惑もかけていない相手にああだこうだと言われなければならなくなる。本当に苦手だ。というか人が嫌い。大人も子供も年寄りも同年代も、人間は全部嫌い。だから私は学校を卒業したら誰も知らない山の奥に行って、ひっそり死ぬんだ。それが将来の夢。二度と大嫌いな人間達に会わないように。死ぬ勇気と度胸と覚悟と実行力さえあれば誰にだって叶えられそうな、すごく簡単で、現実的な夢。卒業があと一年と迫っている今、もはや夢ですらない。目標と言った方がしっくりきそうかな、ちょっと違うか、まあいいや。


 家に帰ったら何をしよう。明日も準備でもしてすぐに寝ようかな。明日こそは誰にも気付かれない日でありますように。私の平穏な残りの日々が、害されませんように。

おやすみなさい。さようなら。大嫌いな世界。

気の迷いです。

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