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ロリコン日記 3月25日

※アダルト向けではありません。しかし、フェミニストやマトモな人が読んだら気を悪くするような内容が含まれています。フェミニストやマトモな人は、絶対に本文を読まないでください。

 今日は土曜日で仕事が休みだった。


 ロリコンだって平日は働くし、土曜日には休む。

 それが平均的ロリコンの在り方なのだ。


 特に予定も無かったので、朝からイオンモールに出かけることにした。

 イオンモールの自動ドアは、万民を分け隔てなく受け入れてくれる。ロリコンであっても、非ロリコンであっても、ひとたび赤外線センサーに感知されれば、自ずと扉は開かれる。それがイオンモールなのであった。


 実を言うと、三日前、3月22日にも、私はこのイオンモールを訪れた。

 その際、ちょっとした手違いがあって、トラブってしまったのは記憶に新しい。


 トラブルといっても些細なことだ。


 その日、3月22日、女子小学生の客が思った以上に少なかった。女子小学生のいないイオンモールに価値はない。憤った私は、ついついインフォメーションカウンターの女性職員相手に、悪態をついてしまった。

「なぜ春休みに突入しているのに、女子小学生の姿が見当たらないんだっ!」

 ってね。

 ロリコン慣れしていない女性職員は大層狼狽したらしく、パニックに陥った。

 その結果、彼女は屈強な男性警備員を3名召喚した。

 私はあくまで対話で事態を収拾しようと努めた。

 しかし、若い彼らは有形力を行使して、私を店外に強制退去させた。

 実に屈辱的な経験であった。


 当時、私は自分に非が無いと思い込んでいた。

 だが、よくよく考えると、私にも悪い点が見受けられることに気が付いた。


 小学校の春休みは3月25日、すなわち今日からのスタートだったのだ。

 すべては私の勘違いが発端だったという訳だ。


 たしかに、あの女性職員と警備員たちの対応には大きな問題があった。だが、私に非がないと言えばウソになる。これは反省に値する事実である。我ながら少々大人げなかったと、後々になって後悔した。


 そして、今日、3月25日、春休み初日。

 期待通り、キッズの客が多く見受けられた。

 当然、女子小学生の姿も多かった。

 時節柄、彼女たちは厚着だった。

 だが、それでも現実の女子小学生の姿には尊いものがあった。

「じつに、眼福。眼福である!」


 気分が良くなった私は、先日トラブってしまった女性職員にお詫びを入れようと思い至った。

 いかに不躾ぶしつけなレディであれども、かつては女子小学生であったという事実に違いはない。

 尊いのはその事実であり、誇るべきは事実に向かう姿勢である。

 私は誇り高き紳士を代表して、いま、再びインフォメーションカウンターを尋ねたのであった。


 彼女が今日も勤務しているという確証は無かった。

 だが、運よく今日も出勤していた。

 これも何かの巡り会わせだろう。

 私は彼女に最大限の敬意を表して対応することにした。

 

 まだ、声は掛けていなかった。だいというのに、私が視界に入るや否や、彼女はミーアキャットのような敏捷さで、私に向き直り、眉間に皺を寄せた。

「よせよ、レディ。せっかくの童顔ロリ・フェイスが台無しだ」

 そうフランクに話しかけた私であったが、見事に無視された。

 彼女は、隣にいた別の女性職員に何事かを耳打ちすると、スッとカウンターの奥の事務室に逃れて行った。


 彼女と入れ替わるようにして、50歳代後半と思しき女性が現れた。細身のパンツスーツを身に纏った、いかにも責任者風の女性であった。その出で立ちにちなんで、私は彼女をパンツスーツ熟女と呼ぶことに決めた。もちろん、心の中でである。


「なにか御用でございましょうか?」

 パンツスーツ熟女は言った。

 やや慇懃無礼な感じがしたが、紳士なのでぐっと堪えた。

「さっきの彼女に言いたいことがあります」

「わたくしが代わりにお伺いいたします」

「直接言いたいのだ。これは、私と彼女の問題だ」

「誠に申し訳ありませんが、いま、彼女は貴方様とお話しできる状態にありません」

「生理ですか?」

「!?」

「PMSですか?」

「あの……何を……」

「これだから初潮を迎えた女はダメなんだ」

「……」

 パンツスーツ熟女は言葉を失った。

 やれやれ。

 話にならない。

 私は素早くスマホアプリの『ルナルナ』を起動して、彼女の生理日を入力した。

「日を改めて伺います。今日の所は帰ります」

 私がそう言うと、パンツスーツの熟女は、驚愕と安堵と軽蔑が入り混じったような表情かおをして、「あ……左様でございますか」

 と言った。

「とりあえず、これだけ彼女に渡してあげてください」

 私はパンツスーツ熟女に、プリキュアのイラストが施された女児パンツを手渡した。

「これを穿いて、女子小学生時代の清い心を取り戻すよう、キツく言い含めておいてください。頼みましたよ」

 途端、パンツスーツ熟女の顔色が変わった。

「こ、こんなもの受け取れません!」

 更年期障害だろうか? パンツスーツ熟女はいきなり憤慨したように声を荒げると、私に女児パンツを突き返してきた。

 私は深くため息を吐いた。

「なにか、勘違いしていませんか?」

「勘違いなものですか! お客様とて、従業員に対するセクハラは許されません! これはれっきとしたセクハラです!」

 やれやれ。

 女ってやつは、どうしてこうも面倒臭い早合点ばかりをするんだろうか。

 私は侮蔑と憐れみを3:7の割合でブレンドした絶妙な微笑を、意識して作り上げた。そして、言った。

「セクハラですか……。とんでもない勘違いだ。いいですか? 私はロリコンなんですよ? そんな私が、アナタなんかにセクハラをすると思いますか」

「わたくし……『なんか』ですって!」

 彼女の顔つきが一層険しくなった。

 どうやら彼女のプライドを傷つけてしまったらしい。

 しかし、そんな程度で私は怯んだりしなかった。

 ロリコンとして、事実は事実として、正確に伝えておくべきだと思ったからだ。

 たとえ、どんな結果になろうとも……。

「私はねぇ、ガチのロリコンなんです。初潮を迎えた女性に興味はないんです。閉経した女性となれば尚更です」

「私は閉経なんてしていません! 4年と半年、生理が遅れているだけです!」

 スーツ熟女はそういうと、私から女児パンツを奪い取った。

 突き返したり奪い取ったり、不合理かつ脈絡のない、実にヒステリックな振る舞いである。

 これには、流石の私も、若干引いた。

 しかし、彼女の奇行はまだ終わらなかった。

 彼女は女児パンツの包装を荒々しくパージすると、パンツスーツの上から女児パンツを穿いたのであった。

 

 パンツスーツ女児パンツ熟女、爆誕の瞬間であった。


「何が生理よっ! バカバカしいっ! 生理の有無で女の価値が決まるかっつーの!」


 彼女はそう捲し立てると、『キエェエエエ』っという金切声とともに、カウンターを乗り越えた。

 そして、その勢いのまま、私のスマホを奪い取り、勝手に自分の生理周期を、『ルナルナ』登録し始めたのであった。

 

 じつに悍ましく、狂おしく、そして、それ以上に哀れな女の姿が、そこにはあった。


「落ち着け! マダム! アンタに生理はもう来ない!」

「来るっちゅうねん、童貞!」

「どどど、童貞ちゃうわ!」

「来月の今頃は、ドバドバ出血してるっちゅうねん、童貞!」

「マダム! それ、生理ちゃう! 不正出血や! あと、童貞ちゃう!」

「童貞の癖に! 童貞の癖に! ワァアアアアアン!」

 

 かくして、50代のオバサンと、アラサーのオッサンが、互いの頬っぺたをつねり合うという、壮絶な死闘が始まった。


 インフォメーションカウンターの別の女性職員が、内線電話片手に、

「誰か! 早く来て! こ、小林主任と童貞のお客様が、『ルナルナ』を巡って大暴れしています!」

 などと喚き始めた。

 きっと、上司の唐突なハッスルを目の当たりにして気が動転したのだろう。

 私はパンツスーツ女児パンツ熟女を振り切って、女性職員から受話器を奪い取った。そして、電話先の相手に、

「童貞ちゃうわ!」

 と一言断ったうえで、通話を切った。


 傍らではパンツスーツ女児パンツ熟女が、更にもう一枚、女児パンツを重ねて穿こうとしていた。『パンツスーツ女児パンツ熟女』が、『パンツスーツ女児パンツ女児パンツ熟女』に進化しつつあった。目が腐り落ちそうな、圧倒的悲劇! それが目の前で展開している! しかし、童貞の私にはどうすることも出来ない!


「童貞ちゃうわ! 童貞ちゃうわ!」


 空しい嘘を繰り返し吐きながら、私は駆け出した。

 無力感に苛まれながら、イオンモールを飛び出した。


 手元のスマホには、閉経熟女の生理周期が表示されたままだった。



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