無題3
8月15日の日記。「今日はボランティア初日だ。頑張ろう。 偽善かもしれないが頑張る。」
紹介を受けてから次の日にはボランティア活動が開始した。
当日、ボランティアのために児童養護施設へ訪れた。
社協のおばさんいわく「合わなかったらやめてもらって全然構わないし、今ここ人手不足なのよ~」と断りきれなかった。 なんというくだらない理由だろうか。
なんとなく児童養護施設というのはマイナスなイメージがあった。虐待、ネグレクト、離婚などなど、いろんな理不尽なことによって集まったお子さんがいるようなイメージだった。
近寄りがたいというか、関わってこなかったし、関わることもなかった場所だった。
児童養護施設を地図をあてにして訪れたとき、やはり勇気が必要だった。
自分で力になれるのだろうか?自分でいいのだろうか?偽善的じゃないのか?やっぱり帰りたい・・・
いろんな考えが沸き起こる反面、言葉では形容できないが、同じように色々苦労した子供時代を送った僕は、力になりたいという強い気持ちが出た。
自然に足が踏み出る。 入口へ入る。
近くの時計台がちょうどお昼を指していた。
入ってすぐに施設の方が話しかけた。事情を話し、ボランティアである旨を話し施設訪問を始めた。
施設長?なのかは知らないけれど、おそらく何らかの役職を持つであろう貫禄あるおばさんと話をした。(どんだけおばさんと縁があるんだ俺は・・・日記にぼやいている・・・)
まぁ、何でボランティアがしたいのか?なんて聞かれることもなく、普通に施設の案内をしてもらった。
すごく開放的な施設で、明るい感じ。庭に咲いてる花が綺麗だった。ふと足元を見ると、アリが何十匹もせっせと巣に踏み潰された菓子を運んでいた。
施設見学中廊下を歩いてる時、グイっと袖を引っ張られた。
そこには小さな女の子が立っていた。「お兄ちゃんは誰?」とても不思議そうに首をかしげている。
子供と話したことなんてずっとなかった俺は、動揺した。 どうゆうスタンスで話すべきなのか不明だった。
察してくれたのかおばさんは僕の自己紹介を代行してくれた。
変なニヤケ顔でよろしくねといった。
キモいとは思う・・・ もう考えないでおこう。
まぁその時点で予想はしていた。というか忘れていた。
俺はコミュ障ではないか・・・
焦る、焦る、でも時間はまってくれない。
気づけば俺は複数の子供さんの前で自己紹介をしなければならないではないか・・・
マジどうしよ・・・・と思った。
でも・・・やるしかないわけで・・・・目をキラキラ輝かして俺に一点集中する視線の前におれは・・・・
「ボランティアできました。○○です。皆さんとたくさんお話できればいいと思ってます。よろしくお願いします。」といった。
実際には噛みまくり、どもりまくりな最悪な喋り方だったと思うが、そこは自己補正かけておく。
その後、ほんのちょっとだけ子供たちと話す時間があった。こんな俺に興味を持ってくれてすごく嬉しかった。上手に返せたとは思わないけど、それでも少しだけ子どもたちと打ち解けられたように感じた。
まぁ初日はそれだけでおしまいだった。本格的に活動するのはまた後日ということで、あくまで顔合わせ的な感じだったんだろう。
おそらく大学入学直後の新歓よりも、精神的にも身体的にも疲れた一日だった。
けれど、もう行きたくないとは思わなかった。
帰り道、時計塔を見るとちょうど17時を指していた。
時計塔の影がまっすぐ伸びて僕の帰り道を示す羅針盤のように思えた。
影の上を歩いて帰宅した。