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リディアの決定

なかなか更新出来ませんが、気長にお待ちいただけると助かります。

「長の様子はどう?」

「意識が戻らない事には何とも…」

「そう…」


いけ好かない長だが、目の前であんな事になりさすがのリディアも心配になる。思い出したくない記憶が頭の中から掘り起こされて嫌な気持ちでいっぱいだった。


「そう言えば、ルークはどうしてソフィアを攫った人が地底人だと思ったの?」

「あぁ。黒髪に黒い瞳は、地底人に一番多い特徴ですから」

「そうなの?」

「えぇ。それに黒い不死鳥は、地底界に生息する魔鳥ですから」

「ルークって、物知りなのね」

「いや、そうでもないですよ」


実際は、リディアが知らなさ過ぎるだけであり、基本に教養があれば大体想像がつく。ルークは、優しさからあえて突っ込まないでいた。


「でも、どうして魔族がソフィーを攫ったんだろう…」

「魔族?」

「あっ、地底人の事ね。今は地底界を魔界って言ったりするの」

「聞いた事ないですね。そう言えば、先程の地底人が言っていた100年ぶりって言葉が引っかかっているのですが…」


やはりルークは、自分が100年眠っていた事に気付いていないのだ。リディアも確信がもてないのでどう答えていいのかわからないでいた。


『私が話そう』


急に頭の中で声がした感覚になり、ルークの顔を見るとルークが長の部屋のドアをノックする。


『入りたまえ』


頭の中でする声が長の声である事に気付き、ルークが部屋に入る。リディアもルークにくっ付いていく。


「長、気分はどうですか?」

『もちろん最悪だ。奴の魔法のせいで、体が動かせんし話す事も出来ん』

「唯一出来るのが、頭話術だけですか」

『あぁ。魔法力をほぼ抜き取られておる』

「やはり彼は地底人ですね。精神系統の魔法をあっさりと何重にも仕掛けているなんて」

「精神系統?何重にも?」


ルークと長の話を聞いていても、理解出来ない事ばかりでリディアの頭の中は疑問符だらけであった。


「人の意思や魔法力を奪う魔法は、精神系統の部類に入るのですが、それは地底人が得意とする魔法。彼は、長を吹き飛ばし体の自由を奪い魔法力を奪う。この3つを同時に発動させたのですよ」

『そんな事は、奴らにしか使えん』


リディアの中で地底人は、人を意のままに操る事の出来る悪魔の様で何より強い生き物だと認識されてしまうのだった。


「長、これからどうしたらいいでしょうか」

『地底界に行くしかないが…』

「地底界の入口を御存知ですか?」

『いや、私は知らないのだ』


役立たず。


リディアは、長なら偉いのだから何でも知っていると思っていただけに一気に落胆した。


『申し訳ないリディア姫。地底界の事は謎が多過ぎて私でも知らない事が多いのだよ』

「ふぇ?」


口に出して言っていないのに、長に謝られて驚き変な声が出てしまった。


「姫、頭話術はその名の通り頭の中での会話をする魔法なんですよ。思いを相手の頭の中に直接伝えたり、相手の思いを聞いたりする事が出来ます」

「げっ」


つまり、今考えている事は伝わってしまうと言う事である。


『シルヴィア妃の言う通り、素直で可愛いらしい。ただもう少し教養をつけないとこう言う場では恥をかくので気を付けなさい』


長に言われ腹が立つが、真実なだけに何も言えない。


「地底界に行く方法、本当にわからないのでしょうか?」

『地底界の入口が、地上界にあるのはわかっているのだが…』

「正確な場所と開け方がわからないのですか?」

『あぁ。五皇帝の結界の所為で、こちらからは何も出来ない』

「そうなると、探すのに時間がかかりそうですね」


ルークは、腕を組み考え込む。どうしたら早く入口を見つけられるのか、ソフィアを無事に助けられるのか…。

静かになった部屋に、空気の読めないリディアの声がやけに通った。


「地底界の事は、地底界の人達に聞けばいいんじゃない?」

「それが出来たら苦労しません…」

『リディア姫、地底人を探すのはとても大変な事であって…』

「あっ!」


ルークは、何かを思い出したらしく、初めて大きな声を出した。その意外な反応に、リディアは目をより丸くして驚いた。


『どうした?』

「長、獣人族なら入口の場所を知っているのでは?」

『そうか!確かに、それなら可能性がある』

「お手柄ですよ。よく気付いてくれました」


リディアは、適当に言った事がまさか良いヒントになるとは思ってなかったので、内心びっくりしていた。


「では、まずは地上界に降りて獣人族の村に行くのがいいですね」

『行ってくれるのか?』

「はい。必ず無事連れて帰ります」

『すまない』

「いえ。攫われた時、何も出来なかったのでぜひ行かせて下さい」


ルークは、長に深々と頭を下げた。顔には出てないが、ソフィアが攫われた責任を感じていたのである。


「はい!」


リディアが、片手を挙げ嬉しそうに瞳を輝かせている。ルークは、野生の勘から嫌な予感がして仕方がない。


『リディア姫、どうした?』

「私も一緒に行く!」

『は?』

「え?」

「だって、ソフィアが攫われた時に何も出来なかったのは私も同じだし。ソフィアがいないなら私がここにいる理由もないし」


散歩に行くのと同じくらい軽いノリで言っているリディアに、二人は思考が少しの間止まってしまった。


「いいでしょ?」

『だが、リディア姫は地上国の王女だ。そんな危険な事をさせられない』

「大丈夫。地上国の獣人族の村って、マルディリッツ国の隣りにあったはずだし」

『しかし…』


長は、預かった大事な姫を旅に出させるわけにはいかないが、リディアの嬉しそうな考えを読んでしまい、言葉に詰まってしまう。


「ルークが一緒だし大丈夫。それに、土地勘だって無いんだし役に立つと思うの」

『だが…』

「ルークが守ってくれるから心配無いわよ。ねぇ、ルーク?」


突然話を振られて、ルークは表情を少し崩した。リディアにニッコリ微笑まれ、何故か何も言えなくなる。


「じゃあ、決定で!」


リディアは、ルークの手を取り真っ正面に立って満面の笑みを向ける。


「よろしくね。ルーク」

「はい」


これが、リディアとルークの長い長い物語の始まりであった。

旅に出るまでの前編みたいなものです。

長くなりそうだったので、2話に分けた感じです。


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