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ソフィアの為に

ついに、ついに登場です!

リディアは、ここ数日とても悩んでいた。大切な話をしてくれたソフィアに隠し事をするのが、心苦しくてしかたがない。


胸に手を当てて瞳を閉じる。ドレスのポケットに入っている大事な物。母親との約束…。


「決して、誰にも見せてはいけませんよ。私のお祖母様の大切な物だから」


母親が、亡くなる直前まで誰にも見せず隠していた物。真っ赤な美しい宝石の付いたロザリオ…。


これが、ソフィアの探している真紅の魔空石であったら…。そう思うとどうしていいのかわからないのだ。


「リディア?」


心配そうにソフィアが、顔を覗き込む。相当ぼんやりしていたらしく、いつ隣りに移動していたかもわからなかった。


「何度呼んでも返事がないから、心配しちゃったわ」

「ごめんなさい」

「謝らなくていいのよ。ただね、リディのワガママが聞けないのは、つまらないわ」


ここに来てからの日々は、リディアにとって今までに無く充実した毎日であった。それもこれも、全てソフィアのおかげだ。


大嫌いな歴史の勉強も分かりやすく、楽しく教えてくれたので苦ではなかった。食事のマナーも今では、何処に出ても大丈夫な程だ。


あれだけ出来なかったリディアが、たかだか半月で何年分の教養を身につけたのか…。


「ソフィア…」

「何?」

「ソフィアは、ここを出れたら何をしたい?」

「急にどうしたの?」

「特に理由は無いんだけど…」

「そうね…」


ソフィアは、あれもしたいこれもしたいと嬉しそうにしている。でも、そんなソフィアの様子を疑問に思っていた。


今まで、そんな事を考えた事がなかったのだろうか…。


これだけ長い間独りでいて、出たら何をしたいと考えた事がなかったのか。もしかしたら、出る事を考えないようにしてたのか…。


「決まった!」


ソフィアは、満面の笑みを浮かべる。


「リディの育った国に行きたいわ」

「え?」

「だって、すっごく自然が多い所なんでしょ?」

「えぇ…」

「ここからの景色は、緑はあるけど花は見えないから」


この部屋には、窓は一つしか無く街並みや木々は見えるが、花は全く見えない。100年もの長い間、ソフィアは変化の無いこの部屋で何を考えて生きてきたのか…。


「リディ?!」


ソフィアが、慌てたようにリディアの頬を包む様に触れる。


「どうして泣いているの?」

「え?」


リディアは、自分が泣いているのに気付いていないらしく、ソフィアに涙を拭われて泣いている事に気付いた。


「あれ?何で??」

自分の意思に反して涙が溢れて止まらない。

「やっぱり、何か悩み事があったのね?」


やっぱり…。ソフィアは、やはり気付いていたのだ。リディアが、悩んでいた事に。


「聞くだけしか出来ないけど、ため込むより良いと思うの」


ソフィアの優しい声色に、リディアは限界であった。これ以上隠していられない…。


「ソフィア、ごめんなさい」

「どうしたの?」

「わっ…私、ソフィアに黙ってた事が…」

「何?」


リディアは、ポケットからロザリオを取り出す。


「ソフィアが探してた魔空石じゃないかな…?」

「これは…?」

「お母様が、お祖母様からもらった大切な物だって。誰にも見せるなって言われてたから…」


だから言えなかったと言って俯く。ソフィアは、リディアの手を掴む。勇気を出して顔を上げるとソフィアの瞳からポロポロと涙が溢れ出す。


「ソフィア…」

「ありがとう。教えてくれて…」


大事にしてくれてありがとうと何度も何度もお礼を言う。どれくらい時間が経ったのだろう。二人の涙が乾き落ち着きを取り戻した。


「まさか、シールが持っていたなんて…」

「本当にごめんなさい」

「いいのよ。逆にこちらこそごめんなさいね。シールとの約束を破く事になってしまって…」

「ううん。きっとお母様だったら許してくれると思うから」


きっと大丈夫。リディアは、自分に言い聞かせる様に何度も心の中で唱えた。


「これで、約束が果たせます。では、リディに頼みたい事があります」

「え?」

「『私に出来る事があったら、何なりとお申し付け下さい』って、言ってくれたよね?」


初日に言った事をソフィアは、きちんと覚えていたのだ。


「えっと…何をすればいいのですか…?」


嫌な予感がしつつもとりあえず聞いてみる。一瞬、あの優しいソフィアの顔が黒い笑みを浮かべた気がした。


「長の部屋の奥に隠し部屋があるの。そこにロザリオを持って行ってくれればいいの」

「長の部屋?!そんなとこ入れないでしょ!!」

「大丈夫。キースに一緒に行ってもらうから安心して」


キースとは、初めに天空界に連れてきてくれた天使君の事だ。彼は、結界を張ったり気配を消す魔法が得意らしい。


「ここに来てから一度も会ってないけど…」

「ずっと、魔空石を探して色々飛び回ってくれていたの」

「そうだったんだ」


そして、ソフィアが時間が無いと言い急遽行動を起こす事になったのだ。


「キースへの連絡は、文鳥によってついているので、階段を降りた所で待機してくれているはずです」

「長の隠し部屋に行けばいいのね?」

「はい。ただし、チャンスは一度だけです」

「え??」

「長は、とても用心深いので、一度誰かに侵入されたと分かると、隠し部屋に強固な結界が張られてもおかしくありません」

「今でも結界が張られてるのよね?」

「えぇ。でも、キースの方が長よりその分野の魔法は強いので安心して下さい」


あんな子供の方が、長より強いとは信じられないとリディアは思っていた。しかしこの後、信じられない光景を見る事となる。


「リディア姫、今からは決して声を出してはいけましぇんよ」

「何で?」

「僕の隠伏の魔法は、誰よりも強いと自負していましゅが、声だけは隠しぇましぇん」

「隠せる人なんているの?」

「いましゅ。しゅべてのしぇかいを一つにまとめる者。五皇帝しゃまだけでしゅ」

「五皇帝?」

「しょの話は、また今度でしゅ。この廊下の奥がおしゃの部屋でしゅ」

「えぇ」

「じぇっ対に声を出してはいけましぇんでしゅ」

「わかった」


パチン。

キースが指を弾いた瞬間、二人を包む空間が一瞬張り詰めた様に重くなった。


「ゆっくり、着いて来て下しゃい」


返事の代わりにキースの服の裾をぎゅっと掴む。リディアの返事だと判断したキースは、ゆっくりと廊下を進む。


長の部屋の前で待つ事十分程で、侍女が一人ドアをノックする。


「お茶をお持ち致しました」

「入れ」

「失礼致します」


侍女が部屋に入る一瞬の隙を見逃さず、長の部屋にあっさり侵入する。


「お茶を…」

「ここに置いてくれ」

「かしこまりました」


侍女は、机にカップを置くとさっさと部屋を後にする。長は、一口お茶を飲むと薄っすらと笑みを浮かべた。


「もうすぐ、私の長年の願いが叶う…」


何故かわからないが、急に寒気がした。リディアは、見てはいけないものを見た気がした。


キリッ。

歯を食い縛る様な音がして、キースの顔を覗くと眉間にくっきりと皺が寄っていた。


「キース?」

「誰だ!!」


つい不安になり名前を呼んでしまった為に気付かれてしまった。長がすごい剣幕でこちらの方を睨み手から何やら光が放たれた。


バリンッ。

その光が、キースの張った結界を壊す。


「キース!」

「おしゃ、申し訳ごじゃいましぇん」


謝るとすぐに指を弾き、再び結界を張り直す。もう一度弾くと横にあった本棚が消滅し、階段が現れた。


「リディア姫、この階段の上に早く!!」


キースに押された瞬間、リディアとキースの間に透明な壁が出来る。キースに近付きたいが、壁に阻まれて行けなくなってしまう。


「キース!貴様また裏切る気か!」

「裏切る?僕の主は、姫しゃまだけでしゅ!!」


長とキースの魔法の攻防戦の激しさに、リディアの身体は何かに縫い付けられているかの様に動かない。


「キース!」

「リディア姫!姫様の為に早く、急いで下さい!!」


キースの珍しく聞き取りやすい言葉にリディアは、ソフィアの願いを思い出し、思う様に動かない身体にムチを打ち階段を昇る。


かなり昇っているが、未だに二人が戦っているらしく、何かが壊れる音が聞こえてくる。

階段を登り切ると重苦しい扉があり、そこを開けると真っ白な部屋があった。


「何これ…」


魔法で作られた部屋らしく、信じられない程広い部屋。何もないただ広く白い部屋である。


奥に進むと白い棺が一つだけあった。棺に近付くとポケットのロザリオが光り出した。


「何で?!」


ポケットからロザリオを取り出すと周りが急に光に包まれる。眩しい光が収まった時、棺の蓋が開いており中にとても美しい青年が眠っていた。


「きれい…」


とても美しいブロンドの髪に閉じられた瞳の色はわからないが、長いまつ毛に鼻筋が通っていて、かなりの美形だと思った。


じっくり見ていると青年が薄っすらと瞳を開ける。灰色の瞳がとても綺麗でリディアは、うっとりと眺めていた。


「リ…ィ…」

「……」


名前を呼ばれた気がして、リディアは言葉を失った。

天使君の名前がついに登場!

ついでにヒーローも登場です!

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