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初めての天空界

少しずつ遠ざかっていく見慣れた街を、腹立たしげに見ているリディア。何でこんな事になったのか、わかっているだけに溜息しか出ない。


「リディア姫、可愛いお顔が台無しでしゅよ」


プラチナブロンドの髪に青い瞳をした少年が、可愛らしい笑顔を見せる。舌っ足らずな話し方と、神話に出てくる天使と同じ容姿をしているのが、何とも言えず可愛らしく不覚にも癒されてしまう。


「自慢じゃないけど、私全く何も出来ないんだけど何したらいいの?」


自由気ままに生活していた為、食事のマナーでさえ出来ない事を自覚している。


「あぁ、大丈夫でしゅよ。リディア姫は、うちの姫しゃまの話し相手をしながら教養の勉強をしゅるのが仕事のようなものでしゅ」

「は?」

「何も聞いてないでしゅか?」


少年が、可愛らしく首を傾げる。


「お父様からは、侍女として働くようにしか聞いてないわ」

「しょうでしゅか。詳しいしぇつ明は、おしゃから始めに聞きましゅから大丈夫でしゅよ」


滑舌が悪く聞き取りにくいが、何となくわかった気がしたので、リディアは相槌を打っておく事にした。


「そのお姫様って、どんな人なの?」


少年が、リディアの質問に瞳を輝かせる。


「姫しゃまは、とても美しくしょう明で心優しく慈悲深く、天空界のおしゃとなるべくして生まれたお方でしゅ」


それを聞いた瞬間、リディアは質問なんかするんじゃなかったと激しく後悔した。そんなお固い姫の相手など、つまらなくて死んでしまうと思ったからだ。


「姫しゃまは、おしゃない頃からおしゃになるべくしょだてられた為に、親しい友人も作らせてもらえず、侍女も厳しぇんされた者以外近付く事も許しゃれましぇん」

「え?」

「唯一親しくしていたのが、リディア姫のお母しゃまのシルヴィアしゃまでした」

「お母様?」


「えぇ。シルヴィアしゃまは、行事がある時には必じゅ姫しゃまに会いに来て、リディア姫のお話をしゃれていました」

「私?」

「はい。元気でしゅなおで可愛い子といつも褒めておいででした」


だから、自分も会えて嬉しいと笑顔で言ってくれた。リディアは、母親が仲良くしてた事から会ってみたい気持ちが少しずつ増えていく。


「しゃあ、しょろしょろ着きましゅよ」


少年が、何もない所で急に止まり何かを唱え始める。不思議に思いながめていると光輝く門が現れる。


「ここを抜けると天空界になりましゅ」


開かれた門を潜ると、急に街が現れた。自然が多く、色とりどりの花が咲き華やかな街並みが続いているようだ。


「すごっ!」

「ここが、天空界の中心地ベルーナ広場でしゅ」

「以外と普通なんだ」

「地上界とほとんど変わらないでしゅよ」


賑やかな商店街を通り過ぎていくと、空に浮かぶ城が見えてくる。幻想的な雰囲気のある城に少しだけ目が惹かれる。


「あれが、クリシュタルキャッシュルでしゅ」

「さっきみたいに飛行魔法で行くの?」

「いえ、城に行くには魔法は使えないので、しぇん用の移動手段がありましゅ」

「専用の移動手段??」

「もうしゅぐ来ましゅ」


そう言った瞬間、日が陰り辺りが暗くなる。上を見上げると大きな鳥が降りてくる。見た事が無い程大きな真っ白い鳥だ。


「天空界の鳥は、みんなこんなに大きいの?」

「いえ、この種だけ特別でしゅ」

「地上界にもいてくれたら便利でいいのに」

「多分、地上界にもいましゅよ。どこにいるかはわからないでしゅが」


ふかふかな鳥の上に乗り、飛び立つと意外にもすぐ城の庭に着いた。ただ、煌びやかな外装にありえない歓迎ムードに気が重くなっていく。リディアは、ワガママだが派手な事が大嫌いなのだ。


外装以上に内装は、無駄遣いと思われる程豪華で、連れて来られた長の部屋は、宝石を何個使ってんだよとツッコミたい程派手であった。


「お初にお目にかかります、リディア・ツイットリィでございます。暫くの間、よろしくお願い致します」


嫌々ながらも、知り得る限界の言葉で挨拶をする。長は、思っていた感じよりかなり年配であった。


「こちらこそ娘の為にわざわざすまなかったね。詳しい事は後で侍女に聞けばわかるから、まずは娘に会いに行ってくれるかね?」

「はい」


できれば早くこの部屋を出たいリディアには、とても嬉しい一言であった。リディアの頭の中は、いったい姫はどんなおばさんなんだろうと考えていて、年増の娘をどんだけ大事にしてんだと笑いそうなのを必死で堪えていたなど気付かれたくなかったのだ。


天使の少年は、いつの間にかいなくなっていて代わりに地味な侍女が立っていた。


「リディア姫、こちらでございます」


黙って付いて行くと、明らかにどんどん城の奥へと進んでいく。


「姫君の所に行くのですよね?」

「えぇ。姫様は、東の塔の上におります」


塔の上?

リディアの頭の中での塔の上とは、良い部屋というイメージが全く無い。そんな所に姫がいるのは、何とも不思議な気がしていた。


薄暗い階段を昇り、まるで囚人に会いに行く様な気分になる。本当に大切にされている姫なのか疑問を感じる。


「ここからは、私は御一緒出来ませんのでリディア姫だけになります」

「え?」


そう言って、さっさと引き返してしまった。なぜ?という疑問符が頭に浮かぶ。とりあえず、さらに階段を昇っていくとやっとドアがあった。


螺旋階段が続き過ぎて、若干気持ちが悪くなっていた。ノックをすると、鈴の音の様な可愛らしい声が返ってきた。


「失礼致します。マルディリッツ国第一王女、リディア・ツイットリィでございます。これから、どうぞよろしくお願い致します」


姫の顔も見ず、とりあえず頭を下げる。見たらきっと、笑ってしまうだろうと思ったからだ。


「シールからよく話を聞いていたけど、本当にシールの若い頃にそっくりね。もっとゆっくり顔を見たいから、顔を上げて欲しいわ」

「あっ、はい!」


ゆっくり顔を上げると、予想外の容姿をした人物がいた。透き通る様な白い肌と少し紫ががった白銀の髪に、濃い紫の瞳が印象的な少女がいた。女のリディアでさえ、ドキドキする程の絶世の美女がいたのだ。


「リディと呼んでもいいかしら?」


こんな美人に微笑まれたら、誰だって…。


「はい。喜んで」


って、答えるに決まっている。


「ずっと独りで寂しかったの。仲良くしてねリディ」

「私に出来る事があったら、何なりとお申し付け下さい!」

「まあ、嬉しいわ!」


この一言が、後に後悔する事になるとは、この時リディアは思いもしなかった。


天空界の姫が登場です。少しずつですが、話が進んでいきます。

天使君の滑舌が悪いのはもちろんさ行です。

さ→しゃ

し→し

す→しゅ

せ→しぇ

そ→しょ

です。

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