三章 導神⑬
その悲鳴にミナは立ち止まり、ゆっくりと振り向いた。そして悲鳴の主を視界に捕らえる。悲鳴を上げたのは――ウーノだった。
「な、何これ、何なのっ!?」
ウーノはそう叫び、銃を影に向けた。
「ば、化け物っ!」
その言葉と同時に、部屋に銃声が響き渡った。
「やめろ! 撃つな!」
イザーナが叫ぶ。だがその時には、すでに弾は全て出尽くされ、空しく撃鉄が下りる音が響くだけであった。
「……私が見えるの?」
まるで何事もなかったかのように、ミナはそう呟いた。そして振り返り、イザーナに顔を向ける。その視線は――イザーナの額の傷に向けられていた。
「…………」
イザーナはミナの体に視線を向ける。所々に穴が開いているところからすると、弾丸は命中したようだ。しかしミナは痛がるそぶりも見せず、静かにこちらを見つめている。そのミナに対して、大丈夫か、と声を掛けるべきなのか、イザーナは分からなかった。
やがてミナは振り返り、再び視線をウーノに送る。ウーノはミナが再びこちらを向いたことで、ビクッと体を震わせた。
「何なの……あなた……?」
「見つけた」
ウーノの質問に、ミナは地の底から響くような低い声で答えた。そして一歩、ウーノに近付くと静かにこう言った。
「処罰対象」
その言葉と同時にミナの体の中から別の影が飛び出した。
「神を知りすぎた人間」
そして――
部屋は血に染まった。