三章 導神⑫
「違う! 私は……私は皆に愛されるべき人間なのよ。誰よりも綺麗で、誰よりも美しいのよ!」
ウーノは銃を強く握り締め、そう叫ぶ。だが、次第にその顔が俯き始め、両手を顔に持っていく。
「なのに……何で、皆私を拒むの……? 最初は優しくしてくれるのに……どうして皆私に乱暴するの……」
ゆっくりと顔を覆う。
「嫌、もう嫌……。私が愛する人は、皆私を拒む……。私を愛してくれる人は皆私に乱暴する……。だから――」
そして――彼女は嗚咽をあげ始めた。
「ウーノ……」
イザーナは無意識に彼女の名を呼んでいた。泣く姿に同情したのか、愛しく思ったのか。
「ガレイド……さん」
ウーノが顔を上げる。未だ目に涙を浮かべた顔でこちらを見ている。イザーナは黙ったまま彼女の言葉を聞く。
ウーノは何かに怯えるような目でこちらを見つめ、静かに口を開いた。
「あなたなら……あなたなら、私を愛してくれると思ったのに……」
「…………」
イザーナはウーノを見ることが出来ず、一瞬彼女から視線をそらした。そしてすぐに何かを決意したような顔で彼女を見て、ゆっくりと口を開いた。
「……ウーノ、俺は――」
「イザーナ――見つけた」
イザーナは息を呑んだ。
突然、前触れもなく、そいつは現れた。
黒い影。実際は黒いレインコートのようなものを着ているだけなのだが、どこも肌が露出していないので、そこだけぽっかりと穴が開いてしまったように感じる。フードの奥にある顔は、暗くてよく見えない。だが、その影が発した声には聞き覚えがあった。
「……ミナ」
イザーナの言葉にその影――ミナはゆっくりと頷いた。
「私の名前……思い出したのね……」
ミナはそう言って、こちらに一歩近付く。ゆっくりと手――骨と化した手を持ち上げる。途端――
「――――!!」
部屋中に悲鳴が響き渡った。