三章 導神⑩
――本当、なんであんたなんか好きになっちゃったんだろ。
過去の映像で、まだ若いミナが下目使いでこちらを見つめている。
――確かにそうだ。ミナとイザナギがカップル成立なんておかしすぎる。
自分の隣で友人が、こちらを見ながら茶々を入れる。
――うるせえよ似非哲学者。それと変なあだ名で呼ぶな。
「……あ」
小さな声を呟き、イザーナは体を起こす。
――なぁ、ミナ。俺のどこを好きになってくれたんだ?
そう尋ねる自分にミナは即答する。
――頼りなくて馬鹿でかっこ悪いところ。
――あのさぁ……俺達お互い好きで付き合ってるんだよな……?
その言葉にミナは微笑みながらイザーナの首に抱きつく。
――当たり前でしょ。好きじゃなかったらこんなことしないって。
「……イザーナ?」
突然の行為の中断に、彼女も体を起こす。
「どうしたの?」
こちらをまっすぐに見つめる目。イザーナは気まずさから、目をそらす。
「……すまない」
その言葉にウーノの目が細められた。
「俺は……」
イザーナは俯きながら言った。
「君を抱けない……」
「…………」
ウーノは無言のまま立ち上がり、ベッドの隣にある鏡台まで歩き、その引き出しを開ける。
「……どうして?」
押し殺したような声。鏡越しにこちらを見ている。
「俺には……」
顔を上げ、ウーノに向ける。
「恋人がいるんだ」
「……そう」
突然ウーノは振り返り、その手に握った物をこちらに向けた。
「じゃあ、もういいわ」
銃声。