表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
IZANAGI  作者: 佐久謙一
9/108

一章 造神⑤

 次に汚い文字が書かれた紙に目をやる。

 字が酷く歪んでおり、暗号のような文だが、一部読める文字があった。

 それにはこう書いてあった。

『死で始まり、生を救い、死で終わる』

「…………」

 ――訳が分からん。

 頭をぼりぼりとかきながら、大あくび。とりあえず顔を洗うことにし、写真と紙を近くの机の上に置いて、洗面所に向かった。

 毛先が割れた歯ブラシと、くしゃくしゃに丸められた歯磨き粉が置かれた洗面台。水道の蛇口をひねり、水を出す。顔に水をぶっかけ、タオルでごしごしと拭き取る。大分すっきりした。

 だが、まだ頭がズキズキと痛むので、シャワーでも浴びようか、などと考えつつ、正面にかかった鏡を見る。

 そこに一人の男の顔が映った。その顔は――

「…………」

 踵を返し、先程机の上に置いた写真を手に取り、洗面所の鏡と写真とを交互に見比べる。写真に写っていた男。こいつは――

「俺……だよな……?」

 目の前の鏡には、先程まで胡散臭いだのなんだの言っていた、男の顔が映っていた。写真よりは少し年を取っていた。

「…………」

 ――つまり俺はあの女の恋人か何かってことなのか?

 写真の風景が遊園地のような場所なのだから、そうとしか思えない。

「それで彼女は怒っていたわけか……」

 そこまで考えて、一つの疑問が浮かぶ。

 ――だけど何で彼女のことを思い出せないんだ? 写真を見る限り、結構長く付き合っていると思うんだが……。

 鏡に映る自分の顔を凝視。彼女が記憶喪失と言っていたことを思い出し、頭に傷等が無いか調べてみる。とくにそれらしい外傷は無かったのでひとまず安心する。一応、体も確認してみたが、ケガは無かった。

「ひょっとして痴呆症?」

 なんとなく出た言葉だったが、自分で言って将来がすごく不安になってきた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ