三章 導神③
「俺は土があれば銃も作れるし、大砲も作れるし、もしかしたら核弾頭も作れるかもしれない。そして、どんな傷だって足りない分を作って、つなぎ合わせることも出来る。だけどな、兄貴。そんな無敵の俺でも作れないものがあるんだぜ」
「そうなのですか……?」
スザーノは大きく頷いた。
「おうよ。それの一つが火だ。前に試したから分かるんだ。他には水とか、空気とか。とにかく、形がしっかりとしていない物は作れないんだ、俺は」
「……それ初めて聞きましたよ?」
「おう。だって言ってないもん」
「…………」
スザーノの言葉に、ツズファは呆れたように息を吐いた。
「あなたねぇ……。アテラもそうですが、もう少し導き手としての自覚というか……覚悟というか……」
「あぁ、もう兄貴の説教は聞き飽きたよ! 今度からはちゃんと教えるからさぁ。見逃してくれよ!」
そのスザーノの態度に、ツズファは再び呆れたように息を吐いた。そこでふと、それならライターを作ればいいのでは? と思ったが、煙草を吸われると気分が悪いのでそのまま黙っておくことにした。
「……まぁ、仕方がありません。今回は許しましょう」
ツズファの言葉を聞くと、スザーノは満面の笑みでガッツポーズを取った。
「今はとにかく待ちなさい。もうすぐ来ますから」
ツズファは、やれやれ、といった感じでそう言った。その言葉にスザーノは態度を一変。一気に気の抜けたような顔でツズファを見る。
「……だから俺達は何を待ってるんだ? もう一時間は経つぞ」
そのスザーノの言葉にツズファは何も返さず、車道に目を向ける。行きかう車を一つ一つ目で追っていく。そんな彼に突然スザーノが肩を揺さぶってきた。
「おい、兄貴! とうとう雨が降ってきたぞ! 今、俺に落ちてきたから間違いない!」
そう言って、さらに揺さぶりを強める。
「酷くなる前に帰ろうぜ、兄貴! 俺は濡れるのは好きだが、風邪をひくのは嫌いだ!」
「雨は最初に馬鹿の上に降ってくる、という話は本当だったのですねぇ」
「誰が馬鹿だ! 俺は敏感なんだよ!」
なおも耳元で大声を張り上げるスザーノに、ツズファは眉をしかめつつ、地面に目をやる。確かにぽつぽつと歩道が濡れている。