二章 死神38
「おい、ミナだろ? 何やってんだ?」
逃げるミナを追う。
「いやぁ、来ないで!」
ミナは必死に声を張り上げる。しかし狭い部屋の中、あっという間にミナは部屋の隅に、追い詰められた。
「……どうしたってんだ、俺だぞ?」
彼女は部屋の壁際で、肩を揺らしていた。泣いているようだった。
「……何があったんだ? 大丈夫か?」
彼女の肩に手を伸ばす。
「触らないで!」
触れた手を払いのけ、彼女はこちらに体を向ける。フードを被っているため、顔は良く見えない。
「もう終わりよ、何もかも! 何で私がこんな目に遭うの!? 何が仕方ないよ! 何が不幸よ!」
頭を振り、叫ぶ。
「何が神よっ!」
「なっ!!」
イザーナは目を見開き、彼女の肩を揺さぶった。
「おい、神だと。一体誰がそんなことを言ったんだ! 一体何があったんだ!?」
肩に置いた手に無意識に力がこもる。気のせいか、肩がいつもより細く、冷たく感じた。
「何があったんだ!?」
ミナはその場にへたり込み、声を上げて泣き出した。
イザーナは、さらに追及の声を上げようとしたが、そのミナの姿に何も言葉が出てこず、ただ静かに見つめていた。
しばしの沈黙。やがて、落ち着いたのか、ミナはぽつぽつと喋り始めた。
「信じてもらえないかもしれないけど……あれは……死神、だった……」
「死神……?」
フードが前後に動いた。おそらく頷いたのだろう。
「……その死神は……私を処罰に来たって……言ってた……」
――処罰。
イザーナの脳裏に、ツズファの言葉が浮かんだ。
――そんな彼らを処罰するシステムがあります。
「禁止事項……」
彼は額に手をやり、必死に思い出す。あの時、ツズファは何と言ったか……。