二章 死神34
ツズファが頷くと、ウーノは突然顔を大きく歪め、ついには声を張り上げて笑いだした。
「ふふふふ、あはははははははははははは! 最高ね!」
そう言って、さらに笑う。
「本当にどこまで馬鹿なのかしら、男って!」
「……どういうことですか?」
眉をひそめ、そう尋ねる。
「まさか作り話、とでも言うのですか?」
「違うわ!」
大きな笑みを貼り付けたまま、ウーノは答える。
「私はストーカーに付け狙われている、と警察に通報したのは本当。それで彼が来て、世話になったのも本当。嘘なんかじゃないわ」
「……死体が見つかったというのは?」
「本当よ。汚らしい格好で下水に浮かんでいたわ。でもね、その死体はストーカーなんかじゃない」
両手を左右に広げ――まるで教祖のように、高らかに叫んだ。
「私が愛していた男よ!」
「……ストーカーだったのは、あなたのほうなのですね」
ツズファは目を細め、ウーノを見据える。
「救いようのない人ですね」
「救いようのないのは、あの男のほうよ!」
目を見開き、言葉を吐き出していく。
「私は……彼を誰よりも愛していたの。知り合ったときに感じたわ。この人は私の運命の人だって。だから私は彼に自分をアピールしたの。メールや写真をたくさん送ったわ。なのに……あの男は私になんて言ったと思う? 気持ち悪いからやめろって言ったのよ! この私に向かって、気持ち悪いと! 許せなかったわ。だから――」
ウーノはそこで口を閉じた。その顔からは笑みが消えていた。
「……それであなたは死体を下水に捨て、現場を作ったわけですね」
ツズファは左手をあごに持っていき、ふむ、と唸る。
「そういえば、この町の警官はずさんな捜査ばかりで信用がないと聞きましたからねぇ。あなたが作った現場も気付かれなかったのでしょうね」
「正解よ、ツズファさん。まぁ、用心として担当の奴に賄賂払ったんだけどね」
ツズファは再び唸り、ウーノに顔を向けたまま、沈黙する。