二章 死神31
「こういったものは苦手ですか?」
残念そうに肩を落とし、ウーノはそう尋ねた。
「え、まぁ、嫌いではないけど、苦手ではあるね」
咄嗟に口から言葉が発せられる。
「なんていうか、こういった作品は感情移入が出来るからこそ、面白い作品だからさ。俺はもうそんな年じゃないっていうか、合わないっていうか……」
「……ようするに嫌いなんですね」
「まぁ……そうなるね」
最後は結局認める形になってしまった。
ちょうどその時、タクシーの姿が目に映ったので、左手で拾う。
「悪いね、また今度」
ウーノは、まだ何か用事があるような顔をしていたが、これ以上話しても余計に気まずくなりそうだったので、早々にここから立ち去ることにした。
イザーナはタクシーに乗り込み、運転手に行き場所を告げる。そしてドアを閉め、窓越しに手を振った。ウーノも寂しそうな顔をして手を振り返してくれた。
イザーナの乗ったタクシーは、渋滞にも遭わず、比較的スムーズに進んだ。そして第一区画に差し掛かったところで、先程のウーノの寂しげな顔が浮かんだ。
――悪いことしたかな……。今度俺のほうから誘ってみるか。
流れる景色を見ながら、イザーナはそう思った。