二章 死神28
「これスザーノ、静かになさい。ここは集合住宅なのですよ」
そのうしろから、胡散臭い面をしたツズファが姿を現す。手には買い物袋を提げている。
「だってよぉ、兄貴。こいつ身体再生してやったのに、俺のこと汚いなんて抜かしやがるんだぞ! 恩知らずにも程がある!」
身体再生と聞いて、イザーナは自分の体を確認する。あの男に撃たれた目も、アテラに焼かれた腹部の傷も、完璧に元通りになっていた。スザーノの能力はやはり不思議でならない。
「我慢なさい、それぐらい。大体私からも言わせてもらいますが、確かにあなた汚いです。一緒に並んでいると、私にまで軽蔑の視線が――」
ツズファは、そこで言葉を切り、スザーノを見る。
スザーノは顔を真っ赤にし、体を震わせていた。今にも泣き出しそうだ。
「うあああああああああああ! 兄貴の馬鹿あああああああああああああああああ!」
泣いた。
そのまま部屋に上がりこみ、涙を撒き散らしながら、アテラに飛び掛かる。
「姉貴ぃぃいいいいいいいいいいいい!」
アテラは一瞬眉をしかめ、体を起こすと、飛び掛かってくるスザーノに綺麗なアッパーをかます。
「がふっ!」
見事にあごに決まり、スザーノはその場で仰け反り、倒れた。
「…………」
そして動かなくなった。
「静かになりましたね。よかった、よかった」
ツズファは例の不気味な笑みを浮かべつつ、部屋に上がる。
「お前酷いな……」
「何がです?」
ツズファは不気味な笑みのまま、何を言っているのか分からない、とでも言うように首を傾げる。
「いい年をして、ゲームなんかやっているニートに言われたくないですねぇ」
「誰がニートだ、手前」
そう返しつつも、なんだかばつが悪くなったのでゲームの電源を切り、部屋の隅に放る。
「ところで身体はもう大丈夫ですか?」
「お前でも一丁前に人の心配が出来るんだな」
「今後の使命の心配です」
「あぁ、そうかい」
ふう、と息を吐く。
「ところで次の使命はいつだ?」
立ち上がり、ツズファの肩に手を置く。