二章 死神27
「上手いもんじゃないか」
アテラはコントローラーを見ながらだが、的確にキャラを操作していく。
「……疲れる」
「頑張れ、頑張れ」
アテラの初々しい動きに微笑みつつ、アテラのキャラに容赦なく技を決めていく。その結果――
「俺の勝ちだな」
数秒でアテラが操作していたキャラは地に伏せていた。
「…………」
アテラはぶすっとした顔で、コントローラーを放り投げる。
「おもしろくない」
そう言って、その場に寝転んだ。
「ふて寝か?」
「違う。疲れた」
「そうかい」
こちらに背を向け、寝転がるアテラに苦笑を漏らしつつ、ゲームをリセットし、今度は一人で始める。
「懐かしいな。ゲームをするのは」
「いい大人が」
「うるせい」
軽口を適当に返す。
「そういえば、ツズファの野郎はどこ行ったんだ?」
「ん、兄貴?」
コロンと転がり、こちらに顔を向ける。
「たしかスザーノと一緒に買い物行くとか言ってたけど」
「スザーノって、あの薄汚い奴のことか」
この部屋を出る前に会った、ホームレスのような男の顔を思い出す。
「うん。その汚いの」
「あの汚いのか」
「誰が汚いのだよ!」
突然大きな声に割り込まれた。その方向に顔を向けると、玄関に薄汚い男が立っていた。
「汚い」
「うるせい! 汚くて悪かったな!」
軽口のつもりが本気で怒ったようだ。しかし大して怖くはなく、子供が必死に大声で自己主張しているようにしか見えなかった。