二章 死神24
その表情は恐怖に歪んでいた。
「女ぁぁぁぁ!! 何しやがった!?」
男はそう叫ぶと、アテラに銃底を叩きつけようと腕を振り上げる。その時、突然何かが蒸発するような音が鳴り、腕に痛みが走る。
「……ぐっ!」
男はうめき声を上げ、振り上げた状態の腕を見やる。
視線で腕を辿っていくと――手首から先が途切れていた。
「あ、あぁぁ……」
腕をゆっくりと下げ、自分の前まで持っていく。手首の傷口は所々が黒くこげ、肉が焼ける臭いを発していた。視線を下げると、銃を持った手が地面に転がっている。
視線をアテラに戻す。アテラは男を見ずに、空を見ていた。雲の隙間から日が照っている。
「良かった。雲に隠れなくて」
そう言ってアテラは――にっこりと微笑んだ。その姿は光に照らされ、一種の神々しさを感じさせた。
「……お前、まさか……悪魔――死神か……?」
男の言葉は少し震えていた。アテラは首をゆっくりと左右に振り、
「違う。神様」
とだけ言った。その子供のような物言いに男はふっと微笑んだ。
「なるほどねぇ……。天罰が落ちたって訳だ」
「うん。そう」
アテラがそう言って頷くと、再び何かが蒸発するような音が鳴り響き――男の首は宙を舞った。
「…………」
イザーナは顔を強張らせ、アテラを見ていた。アテラは口を閉ざしたままこちらに近付いてくる。その顔は無表情だ。
「おい、アテ――がっ!」
イザーナがアテラの名前を呼ぶと同時に、腹部に激痛が走った。顔をしかめ、視線を下げると、傷口が焼けただれ、嫌な臭いを発していた。
「ちょっと強すぎた?」
アテラがそう言って、イザーナの前にかがみこむ。
「でも血は止まったでしょ? 立てる?」
イザーナは質問には答えず、顔をアテラに向ける。
「……さっきのは……導き手の力か?」
その質問にアテラは軽く頷く。