二章 死神⑬
「……通報があった、と言っていましたが――」
あぁ、と相槌を打ち、言う。
「ストーカーだよ。それもかなり悪質な」
「ストーカー? この町にしては珍しいですね」
その物言いに、軽く微笑む。
「そうだな。とにかく俺は通報を受け、彼女のアパートに向かったよ。そして部屋に入ったとき――」
それは酷い有様だったよ、とため息混じりに言う。
「家具はほとんどが盗まれたらしく、部屋はまさに、もぬけの殻って感じだった。その代わりなのか、部屋中に彼女の盗み撮った写真が貼ってあった。チョークのようなもので書き殴った、好きだ、愛している、といった文章と共にな」
この言葉に、アテラが眉根を寄せ、うわぁ、と小さく呟く。
「それで犯人は?」
「捕まえたよ。そのアパート近くの下水道の中で――死体でな」
ほう、とツズファが呟く。
「これまた意外な結末ですね」
「まあな。下水で死んでいるなんて誰も予想付かねえよ。ちなみに死因は薬物を使った自殺らしい」
「それでは時間が掛かったのですか? 解決までに」
その問いに、あぁ、と力無く返事をする。
「そしてその間、彼女の話を聞いたりしているうちに――」
「情が移ってしまったと?」
「……そうだな」
息を吐く。
「あとは言わなくても分かりますよ」
ツズファは、ふ、と軽く笑う。
その顔を見ると、相変わらず不気味な笑みだが、どこか柔らかくなった気がした。
「何だよ?」
「いえ、」
ツズファは再び軽く笑うと、言った。
「初めてじゃないですか? ここまで自分のことを話したのは」
「あぁ?」
その言葉に眉根を寄せる。