二章 死神⑪
「ガレイドさんは警察官なんですよ。知らなかったんですか?」
ツズファがふんふんと、しきりに頷く。
「あぁ、なるほど。だから自殺――」
「えっ――」
「いえ、自生活がなっていません」
ツズファは、さすがにまずいと思ったらしく、慌てて言葉を取り繕った。
「……?」
首を傾げるウーノに、ツズファはさらに質問をする。
「で、二人はどういった、ご関係で?」
「えっ、関係……って言われても……」
「おい、ツズファ。お前さっきから何を聞いてんだ?」
イザーナの言葉に、ツズファは不気味な笑みを浮かべる。
「いいじゃないですか、別に。で、どういった関係で?」
「え、その……」
「関係は?」
「おい」
あまりにもしつこすぎるツズファの問いに、イザーナの声に怒気が混じる。
「何がしたいんだ、お前は」
「暇つぶしです」
イザーナは無言でツズファを睨む。ツズファも負けまいと、こちらを睨んでくる。そしてしばらくの間、お互いに無言のまま睨み合った。息が詰まる沈黙。それに最初に終止符を打ったのはウーノだった。
「す、すいません。私、用事を思い出したから帰りますね」
ウーノは引きつった笑みを浮かべながら、鞄を持ち、立ち上がる。
「あ、あぁ……」
イザーナは、苛立ちからか、呟きにも近い返事しか返せなかった。
「やれやれ」
ツズファはそう呟きながら、店から出て行くウーノのうしろ姿を見つつ、息を吐く。
「あれはわざとか?」
「何ですか? そんなに睨まないで下さいよ」
ツズファは肩をすくめつつ、口元に軽く笑みを浮かべる。
それでも睨んでいると、観念したのか、笑みが微妙に変化した。失笑しているようだ。
「えぇ、そうです。まだ大事な話があるので、あの女は邪魔でした」
「それでも、あれは酷いだろ。あの子はな――」
「あなた」
「あ?」
ツズファが突然真面目な顔を作ったので、その後の言葉が出てこなかった。