二章 死神⑩
料理も粗方片付き、イザーナはウェイトレスに食後の珈琲を注文した。
「どうもご馳走様でした」
ツズファは水を飲みながらそう言った。
「……さっきからお前、水の飲みすぎだろ」
イザーナの言葉に、ツズファは再び水の追加を注文しながら答えた。
「先程力を使いましたから、のどがカラカラなのですよ」
注ぎ足された水をまたも一気に飲み干し、ゆっくりと口を開く。
「私の力は笛を奏でるだけで人を殺すことも出来ますからね。その分デメリットもあるのです」
ウェイトレスが訪れ、珈琲が運ばれてきた。イザーナはそれに口をつけながら、ツズファの言葉に耳を傾ける。
「私の力のデメリットは、力を使えば使うほど、体の中の水分が消費されることです。まぁ、ミイラになるわけではありませんが、脱水症状で倒れることはあります」
「そのままくたばれば良かったのにな」
「すみませんでしたね。死ななくて」
こちらの軽口に、不気味な笑みで返してきた。
そうしてお互いに鼻を鳴らしていると、
「その珈琲美味しいでしょ? 私がいれたんですよ」
その言葉に振り向くと、私服姿のウーノが立っていた。
「ん、もう仕事終わり?」
「はい。今日は午前までなんで」
ウーノはそう言って、イザーナの隣に腰掛けた。そのウーノの行動に、ツズファは僅かに目を細め、口を開いた。
「ウーノさん、一つ宜しいですか?」
「はい?」
ツズファは一瞬イザーナを見て、問う。
「彼とはいつ知り合ったのですか?」
「え? いつ――ですか?」
ツズファは黙って頷いた。
「えっと確か、去年の冬、でしたよね?」
イザーナに同意を求めるようにウーノは視線を向ける。
「あぁ、合ってる。去年の冬、君から通報があった」
「通報?」
眉をひそめるツズファに、ウーノが補足する。